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したたかに増える

2020.07.29 13:57

https://www.hoshi-lab.info/miracle/bud.html 【したたかに増える】より抜粋

細胞の中に、元の生物と同じ遺伝子のセット(ゲノム)を元と同じ組数だけ持った生物のことをクローンといいます。クローン羊やクローン牛など、動物の世界のクローンは最近の話題となっています。私達人間などの動物は、一卵性双生児などのごく一部の例外を除いて、特別な技術を使わずにクローンを作り出すことは難しいのです。物語の世界では、孫悟空が自分の頭の毛を抜いて、息をフッと吹きかけると分身ができる術があったりして、忙しい人ならば、「あんなことができないかなー」なんて考えたことがあるかもしれません。

 ところが、植物の世界では、むしろ、簡単にクローンができない植物のほうが珍しいのです。植物の枝を切り取って、土などに挿しておくと、そこから芽や根が出て、一人前の植物として育ちます。これを挿し木といいます。植物の芽の出方にはルールがあり、茎の先端や葉の付け根には、芽が用意されています。これらの芽は必要のないときには眠っていますが、茎が切り取られたり、春になって気温が上がったりする刺激を受けると、すぐに伸び始めることができます。このような、予め用意された芽のことを定芽(ていが)といいます。

 植物の中には、予め用意された芽のほかに、必要に応じで芽のないところに勝手に芽を作り出して伸びたり増えたりしてしまう植物もあります。このようなルール破りの芽のことを不定芽(ふていが)と呼びます。ここでは、孫悟空もびっくりの増え方をする植物を紹介したいと思います。

(略)

世界各地の暖かいところに分布するベゴニア(Begonia sp.)というシュウカイドウ科の仲間があります。普通の植物では、葉の形が円形や楕円形など、左右対称になるものが普通です。このベゴニアの仲間は、左右不対称なひずんだ形の葉をつけることが大変珍しい特徴です。この特徴がこじつけられて、花言葉では、「片想い」などという悲しい言葉があてられてしまっています。

 左の写真は、俗にレックスベゴニア(Begonia cv. 'Wild Fire')と総称される葉を鑑賞する種類です。これは、葉脈の分岐点から不定芽を出す性質があり、葉をいくつかに切り分けたものを挿しても芽が出ます。日本などに自生しているシュウカイドウ(秋海棠・Begonia grandis var. evansiana)は、葉腋(ようえき・葉の付け根)に珠芽(しゅが・肉芽・むかご)をつくって、それが地面にぽろぽろと落ちて増殖します。


https://www.miyoshi-group.co.jp/blog/%E7%A7%8B%E6%B5%B7%E6%A3%A0%E3%81%AE%E5%AE%9F/

【秋海棠の実】 より

9月に綺麗に咲いていたシュウカイドウも、今ではすっかり枯れ枝が残るのみです。その中に面白い形の実を見付けました。

シュウカイドウは一般に、葉に発生するムカゴで増殖します。小さなイモのような物から芽を出し、茎を伸ばして生長します。

このような増え方を栄養繁殖といっています。遺伝子の点では親と同じ性質なので、お花の色や斑の有無、葉裏の色など

ムカゴの付いていた親と同じ株に育ちます。

これに対して写真のように、実になって種子から生まれた株の場合は、花粉親の遺伝子を受け継ぐので、親とは別の花色、葉の色に育つ場合もあります。

ムカゴは株元に落ちて親と一緒に集団を作り、羽の付いた実は風で遠くまで転がって、親とは違う集団を新たに作ります。

遺伝子の多様性や伝播という性質を、文字通り体現している点で面白い植物だと思います。