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Be ambitious, dear friends.

15歳でお正月グッズのたたき売りをした話①

2020.08.08 08:05

初めてアルバイトをしたのは15歳、高校一年生だった。


アルバイトとかバイトとかが長らく憧れだった。隣町のスーパーに採用してもらい、冬休みの五日間だけ、働くことになった。そこは鮮魚が美味しいので有名な大きめのスーパーで、社員、パート、アルバイト、合わせて何十人もが働いていた。


多分午前9時から午後5時頃までが面接時に聞いた就業時間のはずだったけれど、そんなに早く仕事を終えた覚えがない。帰りのバスがなくて親に迎えに来てもらった記憶が何度かあるので、夜の8時は過ぎているような気がする。が、定かではない。


記念すべき初バイトで、印象的だったことはふたつ。


ひとつめはとっても怖いパートの女性。高校生の私が「祖母と同い年くらいかな」と感じたので、年齢は60代くらいだったろうか。何十年もパートを続けている古参だったので、社員の方たちもこの女性には一目置いている存在だったように見えた。とにかく厳しい。「アンタら、もっと笑顔!」「いらっしゃいませが小さい!そんなあいさつはアカン!」「商品の値段?いつでも答えられるように準備しときな!」「何回も同じことを言わせないで、覚えな!」「休憩は30分以内に戻ってくるんやで!」檄(げき)が飛ぶ…というより単に口やかましいだけだったかも知れない。私は素直だったので言われたことには「はい!」「はいっ!」と返事をしてくるくると働いた。が、なりたてホヤホヤ新人バイトは上手くいかないことが多い。で、叱られる。怖い。バイト達は彼女に叱られないようにいつも肝を冷やしていた。


アルバイト3日目くらいの日、ちょっとしたトラブルがあった。詳細は忘れてしまったのだけど、その古参のパートの方がミスをして、それを私がやったことだと周りに誤解されてしまったようなことだったと思う。私は当然自分じゃないとわかっていたけど、何も言わなかった。長年勤めているパートさんがミスするより新人バイトの方がみんなの非難も軽いように感じたので、多少理不尽だが、まいいかと代わりに謝っておいた。店長や社員さんは気にしなくて良いよ、と言ってくれた。その様子をちょっと離れたところから伺っていたパートの女性の姿が見えた。いつも怖かった彼女の目の奥に悔恨の光があるのを認めた。私は少し気の毒に感じた。


翌日から彼女は私にとても親切になった。



(続く)