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心理的防衛機制の役割

2020.08.01 04:17

https://t-mental.co.jp/clumn/%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%81%AE%E4%BB%95%E6%8E%9B%E3%81%91%E4%BA%BA%E3%80%80%EF%BC%8D%E5%BF%83%E7%90%86%E7%9A%84%E9%98%B2%E8%A1%9B%E6%A9%9F%E5%88%B6%E3%81%AE%E5%BD%B9%E5%89%B2%EF%BC%8D  【心の健康の仕掛け人 -心理的防衛機制の役割-】  より

心の健康に影響を与える要因は、主に3つである。「ストレス要因」「ストレス反応」そしてストレス要因をどう受け止め、どう反応するかといった「心理的防衛機制」である。例えば、今日のような厳しい経済環境では、不況ということは誰にとってもストレス要因になるのであるが、そのことで何かいいことはないかと、プラス思考で考える人もいる。例外的に上手くいっている業種もある。

例えば、任天堂。ここは収益が上がってしょうがないという。不景気のため、外に出ないで家に閉じこもって、ゲームをやっている人が増えたからである。また、メンタルヘルスの業界も景気がいい。うつ病やうつ状態の人が多くなったために、その対策に追われている。しかしこれだけの不況風が吹くと、メンタルヘルス対策どころじゃないといった団体や個人もいる。いずれにしても、不況に対して耐える心や、連携する姿勢が生まれてくるのは確かである。これがプラスの面である。

ストレス要因をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは、前述したような心理的防衛機制にかかっている。ストレス要因に対し、ネガティブな影響を与える防衛機制としては、「抑圧」「置き換え」「知性化」「反動形成」「取り消し」「感情の隔離」「解離」などがあり、気持ちや願望、記憶、または恐怖心などを意識の外側に排除して保つようにしている。いわゆるこれは「考えない」「忘れる」「割り切る」といった代償形成である。しかしその結果、不安やイライラ、抑うつが生じ、精神活動にブレーキがかかる。さらに心理的防衛機制が、ネガティブに強化されると、ストレス反応としては軽度の心象の歪曲が起こる。「理想化」「万能感」「価値の値引き」などの心理的防衛機制がそれを演出する。

自分自身や自分の身体、または他者の心像について、歪曲した形で認知してしまう。そしてそれが自尊心の調整のために、用いられてしまうことがある。そのため人間関係も歪曲してしまいがちになる。こういった心理的防衛機制が、否定的な形で進んでしまったものが、「投影」「合理化」「否認」などである。これらは、不快で受け入れたくないストレス要因や「衝動」「感情」「観念」または「責任」といったことを、自分以外にあると決めつけ自分を守る。しかし、相手や周りからすれば、極めて自分勝手な姿として映るため、人間関係は悪化する。場合によっては、病的に映ったりすることがある。

こういった心的防衛機制が、増悪されると、自己または他者の心像が、さらに強く歪曲したり、誤った認知を行うことになる。その例としては、「自閉的空想」「投影的同一視」「自己像や他者像の分裂」といった防衛機制である。一方、行動化する防衛機制もある。「攻撃性」「引きこもり」「自傷他害行為」などがそれである。

ところで統合失調症や重度のパーソナリティー障害などを生じさせる防衛機制としては、「妄想的投影」「精神病的否認」「精神病的歪曲」があるが、これは個人の反応を封じ込め、客観的現実を認知することをほとんど不可能にしてしまう。心理的防衛機制の働きとしては、「成り立たない」とか、「失敗」と呼ばれ、防衛機制の崩壊ともいわれている。では、どのような心理的防衛機制なら健康と言われるのであろうか。

それには、以下のようなものがある。「自己理解」「洞察(気づき)」「他者理解」「アサーション」「ユーモア」「コラボレーション」「昇華」「抑制」などである。これらの心理的防衛機制は、我々がストレス要因にさらされた時、何故それをストレスと感じてしまうのか、それを冷静に見つめ直し、反応する意味を理解することにある。また、他者に降りかかったストレス要因を受け止め、他者が反応する意味を理解することである。さらに相互理解によって、コラボレーションを深めたり、アサーションによって自己表現したり、ユーモアを交えた形で伝達することによって、癒され、助け合い、成長するといったことを目指す。また、昇華や抑制では、社会的に認められた形でそのストレスを解消したり、納得のいく形でコントロールして整理したりすることである。

こういった心理的防衛機制は、家庭、学校、職場、地域社会などで身につけられていくが、大切なことは、自分がどんな心理的防衛機制を身につけて日々の生活を営んでいるか、まずはそのことに気づくことである。