Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

演劇集団 東京直角街

おばあさんとのひと時

2020.08.05 13:48

地下鉄の駅の2階から地上階を経由して改札階に降りるエレベーターに乗った。


おばあさんと、おじさんと僕。


おばあさんが、おじさんと僕のどちらにというわけでもなく「新宿に行きたいんだけれども…」と発した。


僕はこういう時の初動が遅いようだ。


どういう風に出ようか窺っているうちに、おじさんが返答する。


「そんならJRだな」


おばあさんは、何を言っているか分からない、という顔をした。


「こっからだと一回JRの駅に行ってからじゃないと」


おじさんがそう言いながらも、エレベーターは地上階に到着。


おじさんは急いでいたらしく、足早に去っていった。


エレベーターの開くボタンを押しながら「どうします?」ととりあえず話しかける。


「JRっていうのはどこなの?」


「もうちょっと向こうの方に歩いていくとJRなんですよ」


「遠いの?」


うーん。


JRまで案内すべきか。


しかし、良いタイミングで思い出した。


地下鉄も新宿を通るのだ。


「地下鉄でも新宿行けますよ。ちょっと時間かかるかもしれないけど」


「急いでないからいいわよ」


「じゃあこのまま行きましょっか」


エレベーターの閉じるボタンを押す。


「関西の方?」


唐突に聞かれた。


「いや、関西ではないですねえ」


「あらほんと」


「関西だと思いました?」


「なんかね、雰囲気が」


僕は関西の雰囲気を醸し出していたらしい。


「ごめんなさいね」


謝られてしまった。


「あ、でも愛知にいたことはありますよ」


適当な謎のフォローをしてしまった。


フォローになっていたのかどうか。


おばあさんは無言だった。


改札階に着く。


「そこのホームで待ってて下さいね。そしたら電車来るから」


「ありがとうねえ」


「お気をつけて」


僕は反対側のホームへ。


なんだか好青年を演じてしまった。


演じたわけではないけれど。




…おばあさんって喋りやすいな。


この辺で擱筆。

写真は「どっちやねん。」