観覧料
cf.広島市の「広島平和記念資料館条例(平成6年3月31日条例第13号)」
(観覧料)
第5条 資料館(附属展示施設その他市長の定める施設を除く。)に展示している資料を観覧しようとする者は、観覧の際、別表第1に掲げる額の観覧料を納付しなければならない。ただし、市長において特別の事情があると認めるときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は特別支援学校の小学部、中学部若しくは高等部に在学する者及びこれら以外の者で15歳に達する日の翌日から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるもの(以下「小人」という。)が20人以上の団体で観覧する場合は、同項の観覧料は、無料とする。
いわゆる「言葉狩り」のような気がしないでもないが、『精選版 日本国語大辞典』(小学館)によれば、「観覧」とは、「〘名〙 ① 景色や芝居、絵などを見ること。見物すること。② 本を見ること。本を見て調べること。 」を意味するので、被爆者やご遺族の立場に立ったら、見世物にされているようで、ご不快に思われるのも無理からぬところだ。
では、どのような言葉を用いれば良いのだろうか。
謹んで見るという「拝観」でも良さそうだが、『精選版 日本国語大辞典』(小学館)によれば、「拝観」とは、「〘名〙 神社・仏閣・宮殿など、または、その宝物の類を謹んで観覧すること。」であって、宗教色が付いているので、市立の施設に用いるのは不適切かも知れない。
そこで、戦没者や被爆者への敬意を表するために、「拝見」が良さそうな気がする。『精選版 日本国語大辞典』(小学館)によれば、「拝見」とは、「〘名〙 ① 見ることをへりくだっていう語。謹んで見ること。② (「御能拝見(おのうはいけん)」の略) 江戸時代、江戸城内で演じられる能楽を町人が許されて観覧したこと。③ 商品の売買取引、主に生糸取引で、品物の一部を見本として品質を検査したこと。」を意味する。
現在、一般的には①の意味で用いられているから、広島平和記念資料館条例第5条の「観覧」を「拝見」に置き換えても、ご不快に思われないのではないか。
いずれにせよ、条例案を作成する際には、言葉選びを慎重に行わなければならないことを再認識した。