SRGMって何?「LGBT」「SOGI」には含まれない人たち
関西Aceコミュニティでは、日本でよく使用される「LGBT」や国連が推奨している「SOGI」という言葉を、否定するわけではありませんが、あまり用いることはありません。
代わりに「SRGM」という言葉を使います。その理由について、説明させていただきます。
政治的な理由で決まった「LGBT」の枠組み
実は「LGBT」という枠組みは、専ら政治的な理由で決まったものです。
歴史を振り返ると、元々社会運動(政治活動)の現場において注目された同性愛者は、ゲイ(男性同性愛者)だけでした。第二次世界大戦までの間、日本はもちろん、フランスのようなヨーロッパの先進国も含めて、女性には参政権の無い国はむしろ主流派でした。そのような時代に、女性の中でもさらにマイノリティのレズビアンは殆ど注目されなかったのです。
戦時中、ナチス・ドイツによってゲイの人たちはホロコーストの対象となりました。戦後も日本を含む多くの国が優生思想を採用し、精神障碍者への断種手術等を行いました。そして、同性愛も当初は「精神疾患」に含められてい巻いた。
1970年代までは日本でも同性愛は「性倒錯」として記されていました。そうした中、アメリカを中心に同性愛者の差別撤廃運動が始まります。これを主導したのは男性同性愛者でしたが、次第に女性同性愛者であるレズビアンも声を上げるようになります。
そこで、まず「LG」(レズビアンとゲイ)という枠組みが成立しました。そして、バイセクシャル(両性愛者)も加わり「LGB」の枠組みが成立したのです。
こうした運動は、1990年にWHOが同性愛を精神疾患から外すなど、一定の成果を上げました。
そして、その頃から「身体と心の性別が一致しない」トランスジェンダーの人たちもマイノリティとして声を上げるようになり、彼らを纏めて「LGBT」と呼ぶようになりました。
AceやXジェンダーの存在
しかし、こうしたLGBTの括りに含まれないマイノリティも少なくありませんでした。
まず、トランスジェンダーについては様々な定義が存在し、どの定義を採用するかで混乱も起きました。その詳細はここでは割愛しますが、その中で次第に注目されてきたのは、自分を男性とも女性とも自認しないXジェンダーの人たちがいる、ということです。
さらに、明確にLGBTに含まれないマイノリティとしてアセクシャルの人たちも声を上げました。
こうした中、従来は特定の政治勢力が主導権を握っていたLGBT運動も、次第にマイノリティ当事者の声を重視する運動へと、徐々に舵を切るようになってきました。具体的には、「性の解放」運動とLGBT運動とが切り離され、また、恋愛関係にあっても性的関係を強要してはならない、という意識も社会で次第に広まりつつあり、アセクシャルやXジェンダーの人たちが参加しやすい土台が整った、と言えます。
LGBT当事者も「LGBT」に含まれないマイノリティの人たちとの連帯を深めようと歩み寄るようになりました。「LGBTQ」等と言う造語も作られるようになり、海外ではむしろこちらが主流となります。
そして、国際社会ではあらゆる性的指向と性自認とを包括した概念として「SOGI」が使用されるようになりました。(もっとも、これはマイノリティ自身を著す呼称ではないことに注意が必要)
「SRGM」という新しい枠組みの提唱へ
こうして、従来の性愛規範の見直しやトランスジェンダーの枠組みの見直しが行われるようになりましたが、その過程でアロマンティック(Aro)やアプラトニック(Apl)と言った、恋愛指向によるマイノリティの存在も可視化されるようになりました。
そこで、アメリカのAスペクトラム界隈において、LGBTのみならずAスペクトラムやXジェンダーも含めた、多様な少数派を著す概念として提案されたのが「SRGM」です。
意味は、
S=セクシャル
R=ロマンティック
G=ジェンダー
M=マイノリティ
というものであり、とても幅広い概念のマイノリティを指しています。
この言葉は、全てのAスペクトラムやXジェンダーの人を包括できるという意味で、より優れた言葉であると考えます。
(文責:日野)