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itoaware -いとあはれ- 京都店

粘土で作るシルバーアクセサリー 《銀粘土》はアリか?ナシか?

2020.12.05 11:00

私は嘘をついてしまったかもしれません。

こんにちは。

手作り指輪の専門店「itoaware -いとあはれ- 京都店」です。

このブログでは以前に、指輪作りの手法には鋳造(ちゅうぞう)と鍛造(たんぞう)の2種類があるとお伝えしました。

鋳造が溶かした金属を型に流し込む手法、鍛造はトンカチで叩く手法でしたね。


しかし、実は他にも指輪の作り方はあります。

それが今回ご紹介する《銀粘土》を使った作り方。

アートクレイシルバーとも呼ばれています。

私たち指輪職人にとってはややマイナーな存在なので、すっかり忘れておりました!


せっかくなので銀粘土とは何のか?

アリなのか?ナシなのか?

それに、作り方の工程やメリット、デメリットも合わせてご案内させていただきます。

実は、キットさえあればご初心者でも簡単に作れる方法なんですよ。




銀粘土(アートクレイシルバー)とは?


銀粘土とは、シルバーを混ぜ込んだ紙粘土のような素材のこと。

色も触り心地もまさに粘土そのものなので、クレイシルバーだと知らなければ100円ショップなどに売っている紙粘土と見分けがつかないくらいです。

その正体は、純銀の粉末に、結合剤と水分を加えたもの。

乾燥させて水分を飛ばし、700度ほどの高温で結合剤を焼き消せば、純銀のアクセサリーになります。


基本的には粘土なので、アイデアとテクニック次第で形は自由自在です。

指輪以外にピアスやペンダントトップなどにすることもできますし、複雑な模様を彫り込むこともできますよ。

もちろんアクセサリーにとどまらず、オブジェに仕立てることも可能です。


しかもご自宅で作ることだってできるんです。

初心者用の銀細工セット一式がスターターキットとして、アマゾンや楽天でもそう高くはないお値段でお求めいただけるくらいです。



《作り方》

ごく簡単に説明すると、この4つの工程があります。


「造 形」

  ⇓

「乾 燥」

  ⇓

「焼 き」

  ⇓

「磨 き」


文字だけよりも、こちらの写真付きの記事や動画をご覧になるといいかもしれません。


・銀粘土メーカーの公式動画⇓

・東急ハンズさんの銀粘土体験

この東急ハンズさんのリングは、専用のツールを使ったということもあり、なかなかに完成度が高いですね!




銀粘土の特徴


《自由なデザイン》

その名の通り粘土ですから、粘土で遊ぶよう自由に加工することができます。

針で文字や模様を彫り込んだり、らせん状に捻ってみたり、デザインの可能性は無限です。

乾燥させ、焼く工程で少し縮んでしまうのですが、好きなだけデザインを施せるというのは大きな美点でしょう。

また、熱に強いモノであれば宝石を埋め込むことだってできるんですよ。



《高純度》

アートクレイシルバーで作られたアクセサリーは、銀の純度が99.9%以上になります。

ということは、それだけ貴金属としての価値が高くなるという素晴らしいメリットがあるように思えますよね。


‥確かにそうなのですが、銀とはとても柔らかい金属です。

そのため当店をはじめとして多くのブランドでは、銅など他の金属を混ぜ、合金にするのが一般的です。

ある程度の硬さがなければ、アクセサリーとしては非常に使いづらくなるからですね。


純銀のアクセサリーは傷つきやすく、ツヤツヤに磨きあげても目に見えない細かなキズが無数について、取り扱いに気をつけなければすぐに曇ってしまいがちです。

純度が高いというメリットはそのまま、柔らかすぎるというデメリットにもなり得るのです。



《密度》

アートクレイシルバーは、銀と、水と、結合剤との混合物。

そこから乾燥させることで水を、高熱で焼くことで結合剤を飛ばすのでしたよね?

では、水と結合剤があったところには何が残るのでしょうか…?

そう、それは目に見えない小さな空間です。


アクセサリーの中に空洞があるということは、それだけ耐久性が落ちるということ。

オブジェや無骨なデザインのアクセサリーならあまり気にしなくてもいいかもしれませんが、繊細なデザインのリングで耐久性に劣るというのは、大きな欠点となります。

ただでさえシルバーの純度が高すぎて傷つきやすいのに、密度まで低ければさらに変形しやすくなります。

この「密度が低く、耐久性に期待できない」という点が、鍛造という私たちが採用している手法との決定的な違いと言えるでしょう。




◇銀粘土のメリット

・自由にデザインをすることができる

・自宅でも手軽で簡単に作れる

・純度が高い



◆銀粘土のデメリット

・デザインは個人の技術力次第

・純度が高すぎて、柔らかい

・密度が低くなる

・変形やキズに弱い




【結論】 アリか? ナシか?


それではここまでの話をまとめ、タイトルにもある「アリか?ナシか?」

結論を述べたいと思います。


  作る過程そのものを楽しみたいなら、【アリ】


  長く愛用したいなら、【ナシ】


鍛造の指輪専門店で働く私の思う結論は、ご覧の通り。

やはり耐久性とメンテナンス性に劣ることはどうしようもありません。

もし私がこれから銀粘土と鍛造のどちらかでハンドメイドリングを作るとしたら、やはり後者を選ぶかなと…


しかし、逆に以下のような方には銀粘土のハンドメイドがオススメですよ!

・自宅で手軽にアクセサリーを手作りしてみたい

・長く使うつもりがない

・特別な場面でのみ使うアクセサリーを手作りしたい

・そもそもアクセサリーではなく、オブジェを作りたい




ここまでお読みいただいた方には、なんとなくアートクレイシルバーで作られた指輪を批判するような印象を与えてしまったかもしれません。

しかし私は全くそんな風には思ってませんよ。

ただ私たち「いとあはれ」のコンセプトである「末永くご愛用いただける世界に一つだけの指輪」というコンセプトのうち、“末永くご愛用”の部分とはマッチしていないというだけのことです。



itoaware -いとあはれ- 京都店