ブラインド・テイスティングを科学的アプローチで考える その④「右脳と左脳の理想的な使い方」
前々回のブログでは、ブラインドは感じること、考えることを分けることが必要であるとお話ししました。脳の構造によって役割が違うことがその理由です。今回は脳の役割を通して、ブラインドだけでなく、ビジネスの進め方にも共通する部分がある点について確認していきましょう。
右脳と左脳の役割
「考える」「感じる」とはどういうことでしょうか?考えることは知性を伴う思考であり、それは主に言語や計算力、論理的思考を司る左脳で行われます。そして感じることは、感受性や感覚によって認知される右脳によってもたらされます。右脳に関しては、イメージ力や記憶力、想像力やひらめきを司る脳であり、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感に関係し、感情をコントロールしています。音や色の違いを認識したり、物事に感動したりするのは右脳の働きによるものです。「素晴らしく美味しい」、「なんてエレガントなんだろう」、このようにワインに感動することがあるでしょう。これは右脳によってもたらされるのです。
ビジネスとブラインド、プロセスの共通点
このような右脳と左脳の役割の違いは、ビジネスの課題解決にも役立つそうです。ロジカルシンキングの大家、内田和成先生の執筆した「右脳思考」によると、物事を考えるにあたって、右脳と左脳を交互に利用しながら課題解決していくことを提案しています。わかりやすく言いますと、まずは右脳的な観点から情報をインプットします。例えば街頭調査やインタビューなど人間観察を行うマーケティングリサーチのイメージです。観察を通して何か閃くかもしれません。そして得られた情報や閃きを基に左脳を用いて分析し、論理的に解決策を考えます。そして再び右脳を使うことで、より魅力的な表現でクライアント、または経営陣に提案するのです。この課題解決のプロセスをブラインドに置き換えてみると下図のようになります。ビジネスのプロセスと共通する部分がありませんか?
ブラインドでは、まず外観、香り、味わいから我々にもたらされる情報の収集を行います。この時に五感をフルに活用し、ワインの外観を注意深く観察し、様々な香りを嗅ぎ分け、口の中に広がる味わいの変化を右脳にインプットします。そして十分な観察が終わったらその情報を基に分析します。このワインが何か?様々な情報を基に回答を導いていくわけです。そして、もしもあなたがソムリエでしたら、このワインがどんなに素晴らしいワインであるか、わかりやすく、時に顧客に共感できるエモーショナルな表現で伝達するでしょう。この時再び右脳によって魅力的な表現を考えているのです。
このように五感を用いて得られた幅広い情報を右脳に集約し、左脳による論理的思考で正解を導いていくことがブラインドテイスティングの究極の姿です。
しかしながら、人間の思考は意図した通りに動いてはくれませんよね?日々お仕事をされている方の多くは左脳中心であり、ついつい「考えて」しまいがちです。もちろん私もそうです(笑) では右脳をもっと働かせるためにはどうすればよいのでしょうか?これを解決するためには、人間の感覚、特に嗅覚に注目すべきだと私は考えています。
この続きはまた次回ご紹介します。
Reference:東洋経済ONINE「結果を出す人は「左脳と右脳」を交互に使う」https://toyokeizai.net/articles/-/257361
2016年3月26日(土曜)に行われた第4回アカデミー・デュ・ヴァン杯。初めて優勝することが出来ました。左は常に美しく可愛らしい吉田さおり先生。
2016年から私が新たに取り組んだことは「外観/香りを感じる」フェーズと、感じた情報を基に「考える」フェーズを分けることでした。常に「考えている」左脳型の私にとって、「考える」ことを止めて、まず「感じる」ことに専念することは大きな賭けでありチャレンジでした。