ピンと立った耳と短い尻尾の秘密
皆さんは「断耳(だんじ)」と「断尾(だんび)」という言葉をご存知でしょうか?
ドーベルマンは生まれた時から耳がピンと立っている、コーギーは生まれた時から尻尾がない、と思っている方もいると思いますが、実際は、生まれつき垂れている耳や尻尾を外科手術によって切除しています。この切除する行為を断耳・断尾といいます。
断耳・断尾をする理由
現在では、犬はペットとして一般家庭で飼育されることが多くなっていますが、一昔前までは主に狩猟や牧畜等の作業犬として飼われていました。
その歴史的背景により、以下のような理由で断耳・断尾を行っていたと考えられています。
- オオカミに耳や尾を噛まれないようにするため
- 狩猟や牛追いの時、馬や牛が犬の尾を踏む事故を防ぐため
- 狩猟時に、イバラ等で傷つけてしまう事故を防ぐため
- 狩猟時に、犬の興奮時における尾の振りで音を立て、獲物に気付かれるのを防ぐため
- キツネと見間違えないようにするため
- 荷車を引くときに、長い尾は邪魔であったため
- 断尾犬は狂犬病になりにくいと考えられていたため
- 断尾した犬は税金を納めなくてもよかったため
狩猟などの作業犬として犬を飼っている場合は、このような理由が挙げられますが、前述したように家庭犬として飼われていることが多い現在、断耳・断尾が行われている理由は以下のことが考えられます。
- JKCが犬種標準(スタンダ-ド)に定めているため
- ブリ-ダ-が慣習として続けているため
- 美容整形・ファション性のため
- 垂れ耳の犬は耳の中が蒸れやすいので、断耳することにより外耳炎予防になるため
- 尾に糞がつかないようにするため
- 長い尾が気になり、自分の尾を噛んで傷つけてしまうのを防ぐため
断耳と断尾を行う犬種
断耳はボクサー、シュナウザー、ピンシャー、ドーベルマン、グレートデンなど、断尾はプードル、ウェルシュコーギー、ミニチュアピンシャーなどの犬種で、古くから行われています。
断耳と断尾を行う方法
断尾は生後遅くとも、10日のうちに麻酔なしで切断します。
断耳は生後3ヶ月~5ヶ月のうちに全身麻酔をかけ耳の軟骨の一部を外科的に切除します。
日本以外で行っている国
最近では動物愛護の視点から、断耳・断尾を問題視する傾向が高まっており、イギリス、ドイツ、オランダ、デンマ-ク、スウェ-デン、ノルウェー、オーストラリアなど法律により禁止する国が多くなってきました。
日本にも「動物の愛護及び管理に関する法律」がありますが、この中には断耳や断尾について、まだはっきりと明記されていないのが現状です。
まとめ
元来、犬の祖先であるオオカミは垂れ耳ではありませんでしたが、人間との共存に適した犬がブリーディングという形で継承され、現在のように多くの犬種が作られました。そして、狩猟や闘犬等で使用される時代から、断耳・断尾が行われるようになったのです。
このように人間の手によって断耳・断尾を行われていることについて、皆さんはどう思われますか?
もしかしたら、そのような行為が行なわれていたということを知らなかった人もいるかもしれませんね。
人気がある、というだけで犬を飼うのではなく、このような歴史的な背景も知ることと同時に、犬の本当の幸せとは何かを今一度考えてみてはいかがでしょうか?
私たち人間は、犬に対して責任をもって考えなければならない問題がまだまだたくさんあるということをこの記事を通じてぜひ知っていただきたいです。