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蓮の句

2020.08.14 07:22

https://fudemaka57.exblog.jp/22818541/  【蓮の句】  より

あかつきの秘色凝らせり池の蓮 加藤耕子

あきんどが帽子ころがしぬ蓮の風 米沢吾亦紅 童顔

あめつちにかく微なる音蓮ひらく 篠塚しげる

あめつちの息をひとつに蓮ひらく 村田緑星子

いにしへの色にほひたつ蓮かな 鈴木貞雄

いゐの香に朝気の蓮を愛す也 高井几董

うす縁や蓮に吹かれて夕茶漬 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)

うち日さす都べ淋し蓮の花 道芝 久保田万太郎

うっくっと蓮の奥より誰がこゑ 高澤良一 鳩信

お曼陀羅供へし蓮の開き居し 河野静雲 閻魔

かへる舟ゆく舟蓮のひらく中 大瀬雁来紅

がわ~と蓮吹きすさぶ涼かな 鈴木花蓑句集

くれなゐの蓮鑑真のために咲く 津田清子

ことごとく折れ近景の敵・蓮 久保純夫 熊野集

こなたよりあなたへ渡る蓮の風 高澤良一 素抱

この空を倉の飛びしと蓮洗ふ 岡井省二

こぼるるは露のさだめの大賀蓮 青木重行

さは~と蓮うごかす池の亀 鬼貰

さらさらと日照雨奔りぬ花蓮 千代田葛彦 旅人木

さわさわと蓮うごかす池の亀 鬼貫

ざはざはと蓮(はちす)うごかす池の亀 上島鬼貫

しのゝめや池一ぱいの蓮の花 窪田桂堂

そこら少し片づきしけふ蓮活けぬ 渡邊水巴 富士

そよがさす蓮雨に魚の児躍る 山口素堂

たたなはる沖に祈りの蓮ひらく 松本進

たましいの少し色づき蓮の花 久保 純夫

てのひらに蓮の紅玉つゝみたし 沢木欣一

てらされてをみなの貌や蓮花燈 原田青児

とべよ蚤同じ事なら蓮の上 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)

とんぼうの沙上の影を仰ぎけりー陸奥のその入口の蓮の花 三好達治 路上百句

はすかいに蓮みて心中の刃こぼれ 仁平勝 花盗人

ばら~と頭上の蓮の散りにけり 比叡 野村泊月

ほうほうと蓮食人の群に入る 永末恵子 発色

ほしひ碾く観蓮さんは白襷 本田一杉

ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 漱石

ほの~と舟押し出すや蓮の中 夏目漱石

まじりゐて真菰の丈の蓮の花 高濱年尾 年尾句集

みちのくの星に濡れつつ蓮咲きぬ 宇田零雨

みほとけの見えぬ処に蓮ひらく 青木重行

むらさきに変りし蓮や魂祭 後藤夜半 翠黛

もの出来ぬ痩田うつくし蓮花草 正岡子規

ゆく舟に水漬きし蓮のうかばざる 軽部烏帽子 [しどみ]の花

ゆるやかにひるがへりつぐ蓮かな 軽部烏頭子

よべの痴態偲ぶ窓花蓮眩し 中塚一碧樓

スイツチヨと鳴くはたしかに蓮の中 高濱虚子

一つづつ夕影抱く蓮かな 高浜虚子

一斉に蓮の花揺れ楽湧けり 高橋良子

一日を写経三昧蓮の雨 寺田圭子

一歩退かば一歩に溢れ青蓮 岡本 眸

丈高き蓮の下に居りにけり 比叡 野村泊月

上堂の僧等ねむたき蓮廊下 河野静雲 閻魔

不受不施の師たりき蓮咲きにけり 池田秀水

両側の蓮の高さや舟すゝむ 比叡 野村泊月

乗り移る人玉ならし蓮の露 望一

亡き人の顔のやう蓮咲いてゐる 増田豊子

人の気に船さす池の蓮哉 井原西鶴

今ここへ何所から蓮が来たら嘸(さぞ) 広瀬惟然

仏ヶ日の芋蓮煮るや暮の春 尾崎迷堂 孤輪

仮幻忌や蓮あらしの青こだま 佐怒賀正美

休らうや艫も舳も蓮の中 五十嵐播水 播水句集

佛印の古きもたへや蓮の花 蕪村遺稿 夏

俤(おもかげ)もこもりて蓮のつぼみかな りん 俳諧撰集玉藻集

僧房に蓮の十句の夜明かな 蘇山人俳句集 羅蘇山人

元日や芋牛蒡蓮人参を妻に謝す 橋本夢道 無類の妻

先いけて返事書也蓮のもと 炭 太祇 太祇句選

全身にとぶ泥盆の蓮を剪る 花谷和子

兵送る旗に茎上ぐ花蓮 長谷川かな女 雨 月

再会の男で女で夜の蓮 河野多希女 納め髪

出所もめぐりめぐりて蓮の中 広瀬惟然

刺鯖も蓮の台に法の道 蕪村

剃捨し髪や涼しき蓮の糸 高井几董

前の人誰ともわかず蓮の闇 高浜虚子

十年一睡別れに蓮の花を見る 田中英子

午近き都に蓮かはきをり 柿本多映

南蛮の絵に垂れ下る蓮の首 久米正雄 返り花

又一人足洗ひけり蓮の花 古白遺稿 藤野古白

友舟のへだたりゆくや蓮の中 比叡 野村泊月

古代蓮山よりの風あつめけり 原田 初枝

古代蓮開くや紅のほの暗し 久保田月鈴子

合歓咲いて蓮咲いて余呉夢見ごろ 林 翔

向き合うて額明るし蓮の花 嶋田麻紀

四、五日で家食い荒らす蓮の花 西川徹郎 家族の肖像

地の曇りしづかに盆の蓮を剪る 内藤吐天

垣のひま隣の寺の蓮かな 山田三子

城濠を晩夏の蓮埋め盡す 下村ひろし 西陲集

夕立の来べき空なり蓮の花 芥川龍之介 蕩々帖〔その一〕

夜の蓮に婚礼の部屋を開けはなつ 誓子

夜振火に花びらそめて大蓮 石原八束 空の渚

大白蓮曉雲にふれしかも 松瀬青々

大紅蓮大白蓮の夜明かな 高浜虚子(1874-1959)

大賀蓮咲けりと書院開けらるる 赤間智子

大風に蕋見えにけり蓮の花 佐野青陽人 天の川

天へ声かけ蓮らがひらく坑夫街 寺田京子 日の鷹

女房が蓮を見てゐし蓮見茶屋 京極杞陽

定年や遠目の蓮の吹かれざま 高澤良一 随笑

家鴨寄るときひるがへる花蓮 石原八束 空の渚

山の田の高きに咲きし蓮かな 月舟俳句集 原月舟

岩煙草蓮台ほどの傘傾け 古舘曹人 能登の蛙

己つぼみおのれ畫(えが)きて蓮かな 山口素堂

干支の申ささげし蓮や涅槃像 小原菁々子

幻の西施や雨の蓮浄土 山下佳子

引寄て蓮の露吸ふ汀かな 炭 太祇 太祇句選

往生の決まりて蓮の花懶し 筑紫磐井 婆伽梵

御死にたか今少ししたら蓮の花 夏目漱石 明治二十八年

惜別や蓮玉巻く池をめぐり 岸風三楼 往来

我が蓮梅に鴉のやどりかな 山口素堂

或は唐茶に酔座して舟行く蓮の楫 山口素堂

戸を明て蚊帳に蓮のあるじかな 蕪村遺稿 夏

戸口まで欄間の蓮が伸びつつあり 西川徹郎 桔梗祭

戻り来る舟にかざせる蓮かな 比叡 野村泊月

手にもてば手の蓮に来る夕かな 河原枇杷男 烏宙論

手に触れしもの大蓮かわが足か 今瀬剛一

手のひらに蓮のごとくに露を受く 篠原梵 雨

手向けけり芋は蓮に似たるとて 松尾芭蕉

折りとりし蓮の糸のながれつつ 下村槐太 光背

折蓮の中くぐりぬけ蝌蚪つづく 阿部みどり女

抽んでて宙にとどまる蓮の花 手塚美佐 昔の香 以後

捨舟を隠して蓮のさかりかな 古白遺稿 藤野古白

掛錫して朝の蓮に佇つことも 獅子谷如是

提唱の布袋和尚や蓮涼し 河野静雲 閻魔

揺らぎては刻あをあをと古代蓮 鍵和田釉子

放生会蓮の茶店の旅人かな 久保田万太郎

散る蓮に咲く蓮高田瞽女滅ぶ 相模ひろし

新蓮の料理もいでて盆らしや 素十

旅立ちの街なかに蓮ひらきけり 柿本多映

星ばかり見ないで蓮が開くから 中村苑子

昼中の堂静かなり蓮の花 正岡子規

昼花火おろかにあがる蓮咲けり 富安風生

晦日の暮にもしろき蓮かな 大坂-由平 元禄百人一句

晨朝の法話了りて蓮に歩す 山口無明

暁闇の遊子百人蓮を見る 葛馬房夫

暁闇を弾いて蓮の白さかな 芥川龍之介

月の面に蓮高々と舟進む 五十嵐播水 播水句集

朝の日の力を得つつ蓮開く 稲畑汀子

朝日より先へ開きし蓮かな 来爾

朝曇蓮咲く景を置きにけり 久保田万太郎 流寓抄

朝靄のあなた欣求の蓮ひらく 星野みゑ

朝風やぱくりぱくりと蓮開く 正岡子規

本坊の蓮の花咲くよき日和 星野 椿

本堂に金銀の蓮鳥の恋 和田耕三郎

松風に咲きつくしけり神の蓮 西山泊雲 泊雲句集

柔和に尖る 蓮の蕾と 猫の耳 伊丹公子

検校碑ふぐ供養塚蓮の香に 高澤良一 素抱

極楽や清水の中に蓮の花 正岡子規

欄にまひるの蓮のしづかかな 軽部烏帽子 [しどみ]の花

死はいつもけむれり蓮のか暗がり 河野多希女 納め髪

残る色明日にたゝみて花蓮 佐藤冨士男

母といふ病の母や蓮嵐 正木ゆう子

水すましのせてとろりと蓮の水 新田祐久

水なくて泥に蓮咲く旱かな 正岡子規

水の音聴きつけ大賀蓮ひらく 中村菊一郎

水を踏むもの近づけり鬼蓮に 安井浩司

水中に夕日爛熟花蓮 野澤節子 黄 炎

水中に夕焼浄土蓮の花 川村紫陽

水中に風の明暗蓮咲けり 千種百合子

水泡の相依れば消ゆ蓮の花 村上鬼城

水門に一連の詩や蓮の花 比叡 野村泊月

水面まだ未生のくらさ蓮ひらく 河合照子

池に沈んだ汽車青蓮となりつつあり 西川 徹郎

池を作り蓮咲かせようと思う生い先幾許かと思う 荻原井泉水

池普請鬼蓮の根は別によせ 五十嵐八重子

沐浴の少女をふつと蓮の花 小倉覚禅

河床や蓮からまたぐ便にも 蕪村 夏之部 ■ 葛圃が魂をまねく

沼面出し蓮の宝珠の天指せる 石井とし夫

法悦の徒のまどゐ蓮の花の雨 雉子郎句集 石島雉子郎

洗場の前に聳ゆる蓮かな 比叡 野村泊月

海地獄鬼蓮を刈る年の内 大野 茅輪

涼しさよ鰻頭喰ふて蓮(はちす)花 広瀬惟然

深くめざめて蓮の香吸ひにけり 金尾梅の門 古志の歌

清拭や眼下の濠に蓮むらがり 横山白虹

渋がさに受合せけり蓮の露 内藤丈草

渡し舟蓮にさはりて日傘かな 雑草 長谷川零餘子

渦潮を蓮のうてなといま見たり 三好潤子

溝川に蓮咲きけり雲の峰 泉鏡花

漕ぎゆけど蓮の水路の何処までも 安田北湖

潔く蓮小積まれし一ト處 高橋睦郎 金澤百句

澗松の奥霊地あり蓮の花 古白遺稿 藤野古白

火の後ろふいに二月の蓮畑 永末恵子 発色

炎天の蓮裏返るまで吹かず 石塚友二 光塵

煽られて蓮の棒茎ごっつんこ 高澤良一 随笑

父と蓮との夜の手足を折り畳む 西川徹郎 死亡の塔

父の忌のただむつつりや青蓮 斎藤玄

物食らう身を蓮辯と思うなり 永田耕衣 殺佛

独りゐて闇を涼しむ蓮の花 重田暮笛

現とも夢とも古代蓮の色 河本遊子

田舟して白蓮たるを求め得つ 会津八一

疎みいし母恋う夜明蓮の花 榎本愛子

病床を下がつてゆきし蓮の花 古舘曹人

登呂びとのありし昔の蓮ひらく 百合山羽公 故園

白う咲きてきのふ今日なき蓮かな 渡辺水巴

白き蓮天意のままにひらきけり 橋本美代子

白の原種蓮とゆきかい乳歯落つ 安井浩司 赤内楽

白壁の影をひき据ゑ蓮開く 西村公鳳

白蓮と輝き合ひて白鷺舞ふ 加藤知世子 黄 炎

白蓮にゆふ雲蔭るあらし哉 加舎白雄

白蓮に人影さはる夜明けかな 蓼 太

白蓮に歌はかよへど飢残り 加藤知世子 黄 炎

白蓮に貧乏寺の朝寝かな 山口花笠

白蓮のこの白を言わねばならぬ 大坪重治

白蓮の中の紅蓮を指しぬ 松藤夏山 夏山句集

白蓮の固き蕾の緑かな 成瀬正とし 星月夜

白蓮の夕閉づるあり僧帰山 松藤夏山 夏山句集

白蓮の夢より少し遠くかな 山田六甲

白蓮の散華を待てる男女あり 阿部みどり女

白蓮の朝あな貴にあな艶に 前山百年

白蓮の橋をはさみて咲きにけり 青陽人

白蓮の落ちて地に銹ぶ天衣かな 櫛原希伊子

白蓮の隈どりのごと月のかげ 上村占魚 鮎

白蓮やあちらを向いて薄みどり 松藤夏山 夏山句集

白蓮や浄土にものを探す風 中村草田男

白蓮より来て盤上の汗血馬 竹中宏 句集未収録

白蓮を切らんとぞおもふ僧のさま 蕪村 夏之部 ■ 律院を覗きて

白蓮を映し彼の世の水となる 満田春日

白蓮を活けたる下の夏書かな 赤木格堂

白蓮白シヤツ彼我ひるがえり内灘へ 古沢太穂

盛りあがる蓮田のま中蓮ひらく 出牛青朗

真返なる蓮の一つも音しけり 松藤夏山 夏山句集

眼中の蓮も揺れつゝ夜帰る 西東三鬼

短夜や一輪生けて深山蓮 五十嵐播水 播水句集

短日や青蓮閣の上り段 久保田万太郎 草の丈

石舫のただよふさまに蓮咲けり 西村公鳳

社よき加茂の田中の蓮かな 野村喜舟 小石川

禁猟の古びし札や蓮の中 五十嵐播水 播水句集

禅寺や無愛想にして蓮白し 滝川愚仏

秘仏見し溜息いくつ蓮ひらく 加藤知世子 花 季

空濠の草の中なる蓮かな 比叡 野村泊月

笙ふく人留主とは薫る蓮哉 井原西鶴

筆洗ふながれや蓮の花ひとつ 暁台

糸引いて花を支へる蓮の茎 廣瀬町子

紅き蓮ねむるや長き夕日さし 百合山羽公 故園

紅白の蓮を隔つ陶の橋 後藤夜半

紅白の蓮擂鉢に開きけり 夏目漱石 明治二十九年

緋目高のつゝいてゐるよ蓮の茎 原石鼎

縄文の山河の見ゆる大賀蓮 佐藤美恵子

羅に遮る蓮のにほひ哉 蕪村

老耄とうす墨にじむ蓮の花 松村蒼石

臨湖亭詩會に明けて蓮の音 会津八一

興亡や千万の蓮くれなゐに 山口青邨

舟中へ一ひら散りし蓮かな 田中王城

舟出せば蓮の香あまり高きかな 石島雉子郎

舷に凭れて仰ぐ蓮かな 比叡 野村泊月

花蓮ひたすら茎に捧げらる 泉紫像

花蓮咲くもとづるも夢寐のうち 文挟夫佐恵 雨 月

花蓮香取一郷靄ごめに 荒井正隆

若き母蓮うつくしと子に教ふ 大岳水一路

茂助田に愛すともなき蓮かな 高井几董

草刈女帰るや蓮を手折り持ち 松藤夏山 夏山句集

草市の追荷とゞきぬ蓮の華 柏崎夢香

荻の中しばしい行きて蓮をみる 久保田万太郎 草の丈

落魄の身を蓮に寄する一夏かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣

蒲の穂はなびきそめつつ蓮の花 芥川龍之介 澄江堂句抄

蓮あおる夕風や夏越祭灯る 長谷川かな女 牡 丹

蓮いけにはすの痕なき師走かな 久保田万太郎 草の丈

蓮さいて親子は夢のわかれ哉 中勘助

蓮と太陽己れのほかはうつつごと 河野多希女 彫刻の森

蓮なほ咲くにうたてし初嵐 大谷句佛 我は我

蓮に蛙鴬宿梅のこころかな 山口素堂

蓮に誰が小舟槽ぎ来るけふも又 如菊 五車反古

蓮に雨素通りといふ通り方 高澤良一 さざなみやっこ

蓮のつぼみ幼なく水をのぼりけり 松村蒼石 雁

蓮の中あやつりなやむ棹見ゆる 軽部烏頭子

蓮の中に徐々と入る舟に坐りけり 清原枴童 枴童句集

蓮の中渡舟のみちの岐れをり 下村非文

蓮の水菱の水へと続きけり 高濱年尾 年尾句集

蓮の花いまあけぼのの色を解く 竹田昭子

蓮の花さくや淋しき停車場 正岡子規

蓮の花さしあげにけり舟の中 比叡 野村泊月

蓮の花ちるや八嶋のみだれ口 史邦 芭蕉庵小文庫

蓮の花とらんと向けし舳かな 高野素十

蓮の花ひとりになる日考へず 木野愛子

蓮の花ふつくらと夜も明けにけり 落合水尾

蓮の花咲くや淋しき停車場 子規

蓮の花太古はばかりなくありぬ 和田知子

蓮の花小さき羽音をみごもれる 大串章 山童記

蓮の花御堂に西の主かな 松瀬青々

蓮の花手に手に旧盆の人橋に 大場白水郎 散木集

蓮の花揺れてゐるのは僕の方 後藤 章

蓮の花数へてよりの空の色 柿本多映

蓮の花白し鈎鼻もて愛せし 津田清子 礼 拝

蓮の花虱を捨るばかり也 一茶 ■寛政三年辛亥(二十九歳)

蓮の花遠くにばかり見えてをり 久保ともを

蓮の花開かんとして茎動く 滝沢伊代次

蓮の花難民のまた還りくる 滝井孝作 浮寝鳥

蓮の茎からからと鳴り霰来ぬ 松村蒼石 露

蓮の茎めぐりて花の散り浮けり 滝井孝作 浮寝鳥

蓮の茎散り方の花を支へたる 滝井孝作 浮寝鳥

蓮の莖からからと鳴り霰来ぬ 松村蒼石 露

蓮の雨巨椋一ツに襲ひ来し 松瀬青々

蓮の露ころがる度にふとりけり 正岡子規

蓮の露しづかに今日をしまひたし 古舘曹人 能登の蛙

蓮の風にはかにおこる曝書かな 鶏二

蓮の風立ちて炎天醒めて来し 鈴木花蓑句集

蓮の香に酔ふて寐まらむ親の家 幸田露伴 谷中集

蓮の香の北国の闇赤子猛る 大峯あきら

蓮の香の深くつゝみそ君が家 炭 太祇 太祇句選

蓮の香や一男去ってまた一男 仁平勝 花盗人

蓮の香や水をはなるる茎二寸 蕪村

蓮の香を目にかよはすや面の鼻 松尾芭蕉

蓮の香を窓に運ぶや玉祭 乙由

蓮は肉母上は酢でしめるなり 柿本多映

蓮ひらきそめし逆光線の池 後藤比奈夫 初心

蓮ひらくおのづからなる寂光に 竹下陶子

蓮ひらくとき生れたての星おもふ 辻美奈子

蓮ひらく一人の鬼がくる夕べ 菊川貞夫

蓮ひらく単語と語法まつしろなり 竹中宏 句集未収録

蓮ひらく密かに魂の殖ゆるかに 太田保子

蓮ひらく金剛界の堂前に 茂 恵一郎

蓮ひらく雲も花びらなして透き 宮津昭彦

蓮ほりし水うはずみて夕風す 石原舟月

蓮もまた浮世をわたる水の上 羅空

蓮も見よ城主の碑にも寄れと僧 杉原昌子

蓮ゆれて来て大粒の雨となる 岸風三楼 往来

蓮わたる風に明暗おのづから 松岡ひでたか

蓮わたる風の遠くがかがやける 宮津昭彦

蓮を描く遠く咲く花遠きまま 橋本美代子

蓮を見てゐて唇あけるさびしさよ 山西雅子

蓮を見る虫喰縁に立ちにけり 松藤夏山 夏山句集

蓮を見る詩人のまるき食卓よ 田中裕明

蓮・牡牛・鈴・簑経てまた心臓(ヘルツ)の象 竹中宏 饕餮

蓮世界翠の不二を沈むらむ 山口素堂

蓮切て牛の背にのる童哉 正岡子規

蓮剪つて畳の上に横倒し 鬼城

蓮剪らむとしてさかしまの自己愛 仁平勝 花盗人

蓮剪りて舟を返すを樓に見る 石島雉子郎

蓮剪りに行つたげな掾に僧を待つ 夏目漱石 明治四十年

蓮剪るや花茎これと手にとりて 西山泊雲 泊雲句集

蓮台のあとかたもなき小鳥かな 依光陽子

蓮咲いて 風 その上を その下を 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 夢見沙羅

蓮咲いてこの世の花となりにけり 大倉紀恵

蓮咲いて一羽一羽のごと白し 中川美亀

蓮咲いて下品下生の僧もゐむ 筑紫磐井 野干

蓮咲いて吾に届かぬ縄梯子 柿本多映

蓮咲いて大みささぎに音もなし 石倉啓補

蓮咲いて天平遠き如来在す 岸風三楼 往来

蓮咲いて忘れゐしものわが齢 赤松[けい]子 白毫

蓮咲いて百ケ日とはなりにけり 正岡子規

蓮咲いて禅智内供は身よりなき 筑紫磐井 野干

蓮咲いて約せしごとく加賀にをり 吉田紫乃

蓮咲いて蓮の水にしかざりき 玄

蓮咲きて伊佐沼人にしたしまれ 水村素人

蓮咲き中年にある遠心地 小檜山繁子

蓮咲くとイスパニア語にて言ふならむ 高澤良一 ぱらりとせ

蓮咲くや幻想列車通りすぎ 高田律子

蓮咲くや桶屋の路地の行きどまり 久保田万太郎 草の丈

蓮咲くや榧一本の釈迦如来 長谷川束郊

蓮咲くや耳ぼろぼろの象とゐる 柿本多映

蓮咲くや魚沼郡水あふれ 堀口星眠 営巣期

蓮宿の門の床几に著きにけり 比叡 野村泊月

蓮弁のグラデーションを愉しめり 高澤良一 鳩信

蓮折舟鮒の浮子をすくひ得たり 椎本才麿

蓮散つてすなわち黄泉の舟となる 角川照子

蓮散りてめでたきものは凡夫かな 吾空

蓮散華ひかりの雨の来たりけり 鍵和田[ゆう]子

蓮散華美しきものまた壊る 橋本多佳子

蓮沼の木曾殿最後野分中 平井照敏 天上大風

蓮牛蒡噛めばたやすくしぐるるよ 殿村菟絲子

蓮絲で織らばや蓮の寂光土 筑紫磐井 婆伽梵

蓮花燈今宵ともして明日捨てる 原田青児

蓮花草咲くや野中の土饅頭 正岡子規

蓮茂る中へ舳をすゝめけり 比叡 野村泊月

蓮萬朶白雨すらん彌陀の國 中勘助

蓮見船は蓮に隠れて翡翆飛ぶ 正岡子規

蓮辯の匙の空(くう)濃し白く濃し 永田耕衣 冷位

蓮開きジャポニズム展開催中 高澤良一 ぱらりとせ

蓮開くとき音立つと嘘のよき 宇多喜代子 象

蓮開く一鈍音を放送す 相生垣瓜人

蓮風に当りうたた寝風太郎 高澤良一 素抱

蓮高く萩見の人をかくしけり 大場白水郎 散木集

薫香と蓮の香朝の御堂より 松波はちす

蜻蛉をしづかにどけて蓮ひらく 梅の門

衣擦の音して蓮の開くちふ 瓜人

見たきもの見えて夜明けの古代蓮 松本陽平

赤猪子の怨嗟の紅に蓮咲く 大橋敦子

足許の闇に音たて池の蓮 桂信子 遠い橋

途中より雷のまじれる蓮の雨 藤崎久を

遅れ来て説法聴かず蓮に立つ 西山泊雲 泊雲句集

道鏡と虚子と字を書く蓮の闇 宇佐美魚目 天地存問

遠き世の如く遠くに蓮の華 山口誓子 不動

遠雷や咲き聳えたる蓮の花 五十嵐播水 播水句集

金輪際動かぬ蓮の間の水 高澤良一 ぱらりとせ

門前の老婆利を貪るや蓮の花 正岡子規

院展や蓮の模様の帯しめて 依光陽子

陽は輝き月は照るもの花蓮 和田耕三郎

雑踏も潮のにほへり一の酉 蓮尾あきら

雲衲は棕梠緒の下駄や蓮の花 河野静雲 閻魔

霧藻採る山に池あり蓮白し 雉子郎句集 石島雉子郎

露まみれ喜ぶ野性蓮は弾く 香西照雄 素心

青とんぼ花の蓮の胡蝶かな 山口素堂

青蓮の器量の程も斯くなりて 高澤良一 素抱

音楽の殴打冴えてくる水蓮 増田まさみ

顎ある寂しさに散る蓮ならむ 河原枇杷男 蝶座

風の蓮紅にまさりし白蕾 野沢節子 飛泉

風の蓮餘命の母の胸の艶ン 小林康治 玄霜

風の途小波立つや花蓮 永井龍男

風上ミに顔向けてああ蓮の香 高澤良一 随笑

風立ちて一際蓮のすがれ見ゆ 阿部みどり女

風蓮や鷺脚垂れて吹き上り 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集

風触るる一弁立てて蓮ひらく 亀井糸游

首のべて飛び行く鳥や蓮の上 松藤夏山 夏山句集

髭宗祇池に蓮あるたぐひかな 山口素堂

鬼蓮の水嵩を知らず五月雨 安斎櫻[カイ]子

鬼蓮の真夜に咲くてふ物語 目黒はるえ

鬼蓮の鉢やぶれざる礫かな 青畝

鬼蓮を裂けばむかうも昼なりき 寺田澄史

魂棚に昼のともしや蓮の陰 赤木格堂

鳥うたがふ風蓮露を礫けり 山口素堂

黄金の蓮へ帰る野球かな 攝津幸彦

黎明のさゞ波立ちぬ蓮の花 佐野青陽人 天の川

黎明のレールわたるや蓮を見に 佐野青陽人 天の川

黎明の雨はら~と蓮の花 高浜虚子

黒谷の松や蓮さく朝嵐 河東碧梧桐

さはさはとはちすをゆする池の亀 鬼貫

ざはざはと蓮(はちす)うごかす池の亀 上島鬼貫

たそがれの鳥と化すべししろはちす 三好達治 俳句拾遺

ひるがへるのみとはいへど青はちす 三好達治 路上百句

一弁を欠きて曇れる白はちす 冨田みのる

利根川の古きみなとの蓮(はちす)かな 水原秋桜子(1892-1981)

団なるはちすや水の器 井原西鶴

夕立やはちすを笠にかぶり行く 正岡子規

水あまき寺にてありし白はちす 上村占魚 鮎

浦舟の頭(づ)べしににほふ荷(はちす)かな 内藤丈草

涼しさよ鰻頭喰ふて蓮(はちす)花 広瀬惟然

白はちすうすけむらひてあきらけき 石原八束 空の渚

白はちすひらくひととき浄土めく 柴田白葉女 花寂び 以後

白はちすゆふべの雨を帯びてあり 滝井孝作 滝井孝作全句集

白はちす夕べは鷺となりぬべし 三好達治 路上百句

白はちす手のとどきたる匂ひかな 加藤知世子

白はちす濁流沖をおしながる 石原八束 空の渚

白はちす目覚めむとする薄瞳して 上野さち子

目つむりて待たんかはちすの開花音 池野健

紅はちす密教のことよく知らず 加藤三七子

紅はちす湖より明くる伊香郡 下田稔

花はちす遠見に女みごもれる 石原八束

雨ふくむ枝よこさまや白はちす 瀧井孝作

非在また涼しきものか花はちす 伊丹さち子