グリコ、チョコレート、パイナップル
グリコ、チョコレート、パイナップル。
この三つの言葉に聞き覚えがないだろうか。
今も知っている小学生がいるかどうかわからないが、これはジャンケン遊びの一種である。ジャンケンをし、グーで勝ったらグリコ(3歩)、チョキならチョコレート、パーならパイナップル(共に6歩)、言葉の数だけ前に進める。ルールは簡単、ゴール地点に誰よりも早く到達した人の勝ち。小学校の階段や下校時に友達と歩きながらよく遊んだ。
ひょっとして地域によってはグリコじゃなくてグミとか、パイナップルじゃなくてパイロットとかパンダパンとか、言葉のチョイスが異なるかもしれないと、今しがたインターネットで検索をかけてみた。が、「じゃんけん グリコ チョコレート パイナップル」で、ちゃんと出てきた。ということはこの三つの言葉は一応、全国共通なのだろうか。こういう類の遊びは学校で教わったわけでもなく、かといって当時はインターネットなどなかったし、TVやメディアを通して有名になったという覚えもない。それなのに当時の小学生は誰もが知っていた。遊び方は直接、友達や先輩から受け継がれてきたと言えるだろう。
ゲームに勝つには2つの条件がある。一つは出来るだけ早くゴールにたどり着くこと。もう一つはなるべくジャンケンに勝つこと。勝たないと前に進めないから。
初めてルールを聞いた時(小学一年生くらいだった)、とにかく早くゴールに到着したかった。そのためには、なるべく多く進む必要がある。たった3歩のグリコは出来るだけ避けたい。‥と考えた私は、ジャンケンの度にパーばかり出そうと決めた。だって6歩も前に進めるのだもの(ちなみにチョコレートも同じ文字数なのに、なぜかパイナップルの方が文字数が多いと感じた)。この単純な作戦はすぐにバレてしまい、友達はチョキばかり出すようになった。当たり前だ。ジャンケンでパーばかり出す子供がいたら、勝つ方法が丸わかりなのだから。お陰で私は全然前進できなくなった。
その時は学校の階段で遊んでいたのだけど、ジャンケンで負けるごとに他の友達がどんどん階段を上って行って、姿が見えなくなっていくので焦った。上の方の階の手すりから、友達が顔を出して「Yちゃーん、頑張れー。」なんて手を振ってくれているのが見えた。私も「上に行きたいけど、勝てないから行けないよー!」と、1番下の階から叫んでみた。すると、「ジャンケンなんだから、パー以外にも出せばいいんだよー」と声が返ってきた。なんだ、そういうことか。
友達は、私がちょっとずつ勝ち上がってくるのを応援してくれた。グーで勝ったらグリコ。チョキならチョコレート。パーはパイナップル。随分と遅れをとった私が一段ずつ階段を登ってようやく三階にたどり着いた時らみんなは「よかったね。」と笑ってくれた。
盛り上がったところで、予鈴が鳴り、中休みが終了となった。急ぎ教室に帰りながら、昼休みに続きをしよう、とみんなで約束をした。
と、いうようなことを、実はいまだに、駅やショッピングモールの階段を昇降する時、ふと思い出し、心の中で言ってしまう。
グ、リ、コ。
チ、ヨ、コ、レ、イ、ト。
パ、イ、ナ、ツ、プ、ル。
道具がなくても最高に楽しく遊べるゲーム、ジャンケングリコ。いつかまた流行らないだろうか。
Be ambitious, boys and girls!