職員モラールの構成要素①組織内のコミュニケーションの活性化と職場における雰囲気の関係
職員による利用者への働きかけについて、職員が利用者のために行動しようとする背景には職員モラールが影響するということが様々な研究報告などから考えられる。
介護技術を媒介として、私たちは利用者に係わります。介護関係の中には利用者が職員の介護を通じて実感する満足感が信頼に変化していく過程があるといえま す。関係性のあり方が満足を左右するということであると、その媒介となっている介護技術が重要と考えることができる。総じてサービスの質といわれるところ は、この介護技術をサービスとして提供する人、そして技術を使う人の要素に大きく関係していると考えられ、要素に大きく影響するのが職員モラールではない かと考えられる。
モラルの概念自体を定義するのは、とても難しいと思いますが、この考えに対する参考になるものとして、研究のための覚書に記してある『介護分野における労働者の確保等に関する研究』及び、介護現場からみたサービス構造と施設評価への影響(質問紙調査からみた長崎県特別養護老人ホームにおける現状)の二つがあげられます。
介護分野における労働者の確保等に関する研究の中で介護職の確保の定着に向けて6つの点を提案しています。その中の(3)施設介護においては、特に経営方針、管理のあり方に工夫が必要であると言及していおり、コミュニティー型対策が有効であるとしています。
(6)コミュニティ型対策を取り、介護職の不満を低めるだけでなく、やる気や満足度を高める。
現状では多くの事業所が、個々の介護職の要望に応えたり、制度面での対応を図ることで介護職をつなぎとめようと努力している。だが、これらは必ずしも定 着・確保の有効な手立てとはなっていない。データ分析結果からは、介護職の確保・定着に成功している事業所に共通する特徴として、組織内コミュニケーショ ンを活性化し組織内での情報共有を図り介護職の健康対策や能力開発に気を配り職場環境を整えるなど、介護職を組織共同体の一員として見なし処遇するコミュ ニティ型対策が見出された。
理論的にも、コミュニティ型対策は、介護職の職務不満を低めるだけでなく、介護職の仕事の結果への責任を高めることでやる気や満足度を引き出す。本データ分析結果から実証的に導き出された上記1~5の結果も、コミュニティ型対策を積極的に進めることで対応が可能である。
現場でこのような対策をとっていくには金銭的な原資も必要であろうが、それよりもむしろ経営者やマネジメント層の従業員一人ひとりに対する見方が重要とな るだろう。介護職一人ひとりを事業運営上での手段としてではなく組織共同体(コミュニティ)の一員として見なし処遇することで、多様なバックグラウンドを 有する従業員ひとりひとりを取り込み、その成長に応じて処遇することで、介護職の疎外感や役割不明瞭感を解消し、専門職としての知識・スキルの習得が押し 進められていく。このような職場は、定着率が高まるばかりでなく生産性が高い職場となり、また、新たに介護に従事する者にとっても魅力ある職場となる。
結果として、労働者のみではなく、利用者からも選ばれる職場となり、そうすれば更に人材の確保や育成を進める原資も豊かになる。このように、コミュニティ型対策はまさに、介護職の労働特性に応じたアプローチであるといえる。
また、報告書では、今まで問われていなかった経営者やマネジメントについても言及しており、職員を組織としての歯車、駒ではなく主体的に行動・能力を発揮 する個人として捉えその個人の指向性を引き出すコミュニティー型対策が必要であり、そのための経営者・管理者の職員一人ひとりに対する見方が重要となると 述べている。
利用者への働きかけについて、職員が利用者のために行動しようとする背景にある職員モラールとの関係において、上記報告書にあるような仕組みを、危機感を もって創っていく必要性を強く感じます。これらを参考にしながら職員モラルの構成要素について考え、どの様な考え方や行動様式が必要になっていくか継続し て整理していきたい。以下考えられた要素について記します。
①組織内のコミュニケーションの活性化と職場における雰囲気の関係
②組織の経営方針とその徹底(誰が担うのか)
③職員の個別化
④能力開発 研修 自己啓発
⑤上司と部下の関係 上司への信頼 リーダーが不可欠
これらが介護技術を使う人の要素に大きく関係している職員モラールの構成要素であると考えられる。まず①の組織内のコミュニケーションの活性化と職場における雰囲気の関係について考える。
情報の共有ができているかどうか。事象が起きた時、あるいは問題が起きたときに蓋をせず、一部の人間の問題とするのではなく組織の共通の課題として取り組 めるようなオープンな仕組みが必要となってくる。このような仕組みづくりの前提には、経営者や管理者の考えがとても重要になってくる。
現場で起きている問題や課題を、人の問題として注視するだけはなく仕組みや流れ、構造上の問題と捉え整理していくことにより、人の問題なのか、仕組みの問 題なのか、あるいは流れの問題なのかという要因が探りだされてくる。人によってでしか伝えることのできない情報とは何か、あるいは人が活かされるためには 何が必要なのか、どのような仕組みが必要なのかを考えるようになる。人への見方に変化が起きている。
仕事としての介護、そこから生れる「意味」を深いところで「解かった」ということが共有の始まりであり、「意味」の共有が活性化のプロセスであると考える。介護を通じて起こる問題がどの様な性質の問題なのか、そのことに対する提案や意見が飛び交う雰囲気が生れてくる。
命令系統はしっかりおさえながらも、下から上へ吹く風と上から下へ吹く風があるように組織の中にも対流現象がある。冷めたら空気は下へ、暖かくなったら空 気は上へ 、ぶつかるところにパワーが生れる。しかしそれらは繋がっているのである。介護現場の組織も対流現象のように現場と施設はつながっている。この力のあつま る場を仕組みとして創っていく必要があると考える。
そして誰が担うのかという重要な問題があるが、例えばトランプゲームの場合、親だけがルールを知っていてもゲームにならない様に、全ての職員が組織内のコ ミュニケーションについての理解が得られるように明言し意図的な場を創っていくことは言うまでもない。介護現場は切り目ないケアの連続性という特性がある ように重要なのは、日々の介護実践の中において先輩やリーダーが積極的に、あるいは意図的にケアの内容について職員を指導したり確認するという行動が新し い情報を生む、これらの行動が仕組みづくりとしては有効ではないかと考える。