バロックの時代8-フェリペ4世とヴェラスケス
2020.08.08 09:26
1621年3月31日、スペイン王フェリペ3世が42歳の若さで崩御した。ポルトガルから帰ったところ気分を害した。王宮の火鉢が近すぎて、王は汗をかいていたが、儀礼にこだわり連絡ミスで誰も動かせなかったという。ともかく若干16歳の息子フェリペ4世が即位した。
新王は教養と熱意があり、期待が高かった。しかし歳若く、自分の侍従であったオリバーレス伯爵を寵臣として、政治を任せた。オリバーレスは、フェリペ2世の栄光の再現をめざし、30年戦争に積極的に関わっていく。さらに芸術好きの4世のもとでスペイン絵画は最盛期を迎える。
1623年その立役者ディエゴ・ヴェラスケスが王の認定を得て宮廷画家となった、24歳。彼はそれまでボデゴンといわれる風俗画家である。しかしその俗と聖なる世界を接続するのだ。「マルタとマリア宅のキリスト」では、聖書の物語と現実が接合されている。アビラの聖テレサは、この場面で「土鍋にもキリストは宿る」と言った。台所も聖なる場所なのだ。
そして、「セヴィーリャの水売り」ではただの水売りを司祭のように堂々と描く。実はこのグラスをただの水売りが持てるはずがない。これを見た新王は「あの水が飲みたい」と言ったという逸話がある。
下はセヴィーリャの水売り右はグラスと素焼きの瓶のアップ