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Oimachi Act./おい街アクト

カンヌ映画祭で2度もパルム・ドール賞を受賞 した今村昌平監督。神様も苦笑いしてしまう人間模様を描いた「赤い殺意」

2020.08.12 03:00

今村昌平監督作品の根底に流れているものは、日本人の人間がもつ逞しさだ。それは野性のしたたかさ、逞しさとも言い換えることができる。


野性らしさであるから、もちろん性に対する貪欲さも人間は持ち合わせていることを描いていく。


さらに、いかに生き抜くために人間は馬鹿げたこともやるし、とんでもないこともやっている。そうして、生きていかなければ生きていけない社会の不条理、理不尽さも捉えていく。


臭いものにフタをする作風ではなく、フタをとってしまい、端から端まで取り出して、臭いものだらけにしてしまう。

そこが今村昌平の作品は、"重喜劇"と言われる深い世界だ。

 

要するに、人間なんて、そうたいして清い生き物ではなく、善もあれど悪もあり、その裏にも善悪に重なる不安定さ、均衡がとれそうでとれない社会と人間の関係。それでいて何故かたくましく人は生きている。社会に同化することも知っているし、同化するためには多少はエゲつなくもなる。


それも人間のたくましさである。

神様も苦笑いされて、許して下さるような世界が実の人間の姿では。

 

日本の地方に行けば行くほど、柳田国男の民俗学的なものが未だに残っているし、日本の素顔は実はそんな田舎に行くほど、あっけらかんと行われていて、罪とか罰とかはその地方の範疇で決まるもの。

 

カンヌ映画祭で二度もパルム・ドール賞を受賞できたのは、臭いものにフタを取った世界を普通の人が、普通にやってるつもりで、それが実はこっけいであり、人間臭くて逞しいからで、日本の軍国主義に隠されたほのぼのさを社会の底辺に住む人間のレベルで描いたからではないか。

 

この「赤い殺意」と「うなぎ」は、今村昌平の持ち味の重喜劇が解かりやすく、どうしようもない人達によって成り立つ小社会が描かれている。この2作品がパルム・ドール賞に輝いた。

 


「赤い殺意」は1964年の作品。

藤原審爾の原作を今村昌平と長谷部慶治が共

同脚色した社会派ドラマ。

 

強盗に犯された人妻が、その男を嫌い、殺したいほど憎いとうらむが、犯されたことで体に火がついた…。


身体の内から湧き出てくる本能とセックスの欲望は、憎いながらも人妻は燃え続け、欲情の「おんな」に成りすましている。

夫の知らぬ妻のセックス。

夫も妻の知らないセックスを。

 

日本人の精神構造にメスを入れ、恥部をえぐり出す。

実話に基づいた藤原審爾の原作。

 

舞台になっているのは仙台。

春川ますみが貞子を演じ、西村晃が夫を演じる。

 

東北訛りのセリフが田舎臭くてリアリティで、民俗学的な臭いをプンプンさせている。


春川ますみの肉肉しい体つきは、まるでメス豚のようにいじらしく、どんくさく、野性的で、スクリーンはベタ塗りにされてしまう。

 

夫は大学の職員で、性の対象となっているのが同僚の女性。5年も続いているSEX。貞子より美しいし、頭も良い。


ありそうで、ある。なさそうで、実はある。実話を基にした映画は重たいが、面白い。

 


●「赤い殺意」(1964年作品)

監督/今村昌平

出演/春川ますみ、西村晃、露口茂、北林谷栄、北村和夫、小沢昭一、他