2020.08.09.「神田愛山 真夏の連続講談の会【二日目】」
★以下、臨時パンフレットとして配布したものの加筆修正版です。
初日の高座で、今日の主役である愛山先生の口から紹介があったのは、師匠の先代神田山陽は勿論のこと、それ以上に小金井芦州先生に可愛がってもらったということでした。
私の初釈場体験は今から36年前のこと。当時、雑誌『ぴあ』で招待券を申し込むと、高確率で当たったのが上野・本牧亭でした。中学の時であったので、学校が休みの日を選び、三鷹と御徒町の往復の交通費と茶菓代を捻出して足を運んだのを覚えています。その時に高座に上がった一人が、その芦州先生、つまり六代目小金井芦州でした。歯切れが良くて、啖呵が巧みに切れて、押しの強い、テンポの良い口調が印象的で、恐らく多くの人が挙げる『忠治山形屋』は右に出る者は……というものであり、芦州先生もまた、私を講釈の世界に誘ってくれた一人でした。
芦州先生と愛山先生の侠客物が大好きなのは、登場人物の侠客達が実はいたって人間らしいところです。弱きを助け強気をくじき、生き方に多くの人が納得する大義名分があり、義侠心に富む。そんな侠客は今のやくざではなく、以前のやくざであるということは、今の若手講釈師にも言いたいことの一つです。昨日のボロ忠にしても、賭場に連れて行ってもらえないからと親分勘吉の着物を拝借し、それを知った勘吉も、他では大親分と呼ばれる男なのに「仕方ねえなあ…」という言葉が聞こえてきそうな、それでいて、いざとなれば度胸が据わる。侠客物の楽しさは、そんなやり取りとともに、“男が男に惚れてしまう”生き方へのクローズアッの仕方に「も」あるのではと思っています。
後席は『赤垣源蔵徳利の別れ』。言わずもがなの一席……というところで、今日も紙幅が尽きました。
本日は『ご近所大戦』と『講談私小説・真剣師』の二作。古典とは違った新作での愛山節をお楽しみください。