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🌸ブログで読む『ただいま大須商店街⑦-後編-』~転機~

2021.10.14 03:15




久美子が家を出てからの27年間―


「まつだや屋」を開けない日は
一日も無かったという正さん。


蒸し器の湯気がほわほわと立ち昇り
朝の柔らかな光が射し込む工房で…

優太と2人、
その楽しいお散歩の幸せな時間を噛み締めながら
正さんは、倒れてしまいました…



🌸前回のお話🌸






空の木箱を見つめる久美子の顔が曇る。









何度見ても、空っぽのまま…


ため息も出ないほど
久美子は途方に暮れていた。



と、その時・・







恐る恐る開けられた扉の向こうには
大輔の心配そうな顔。


久美子「あぁ…」

大輔「親父さん…倒れたんだって?」



いつになく強張った顔の大輔。



久美子「ああ…。 うん…」

大輔「大変だったな…」


久美子の顔をちらりと見たきり
まともに、その顔を見れない大輔。







大輔「右腕だった佐藤さんが辞めてから…
一人でこの「まつだや屋」を守って来たのが 仇になったなぁ…」


久美子「…」










久美子「(思いついて)そう言えば…
【大須五番街計画】の討論会…
代わりの人、いるの…?」









大輔「いるよ…」


久美子「ああ…良かったぁ…」









大輔「…俺だよ。」


久美子「大輔が~?」


大輔「うん…」


久美子「アンタ、人前で喋るの苦手じゃん!!」


大輔「ん…」


久美子「国語の授業も"噛み噛み"だったし…」


大輔「バカっ!」


初めて久美子を見る大輔。


久美子「…!!」


大輔「何歳(いくつ)だと思ってんだよ!!」


久美子「大丈夫なの~?」










大輔「大丈夫っ!!
インバ…ビュ…(バチン)
イン…バッ…ブンド…ブチョーだぞっ!俺は!!」








久美子「(小声で)噛んでるし…」


大輔「…」









久美子「…(虚ろな目)」

大輔「…(むぅ)」











秘書「…分かりました(微笑む)」









受話器を置いた、秘書は
ポスターの前に座る、杉山の横に立った。









秘書「先生…!」


杉山議員「…?」


秘書「「まつだ屋」のご主人が入院されたそうです…」


杉山議員「何!?倒れたのか?」


杉山の目を見つめ大きく頷く、秘書。


杉山議員「・・・(笑)」








翌朝ー


朝の光が射し込む工房に
一人佇む、久美子。









作業台の上は…
綺麗に片付けられていた。


久美子の脳裏には…
また古い記憶が蘇っていく。










久美子「お父さんが死ねば良かったのに!」




黙々と餡を煉る正さんの背中に、
久美子は出来立ての上用饅頭を投げつけた。




正さん「…」










                        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄






久美子「私、出て行くからっ!」


階段を駆け下りる、久美子。



正さん「何を言っとるんだっ!」


久美子「饅頭なんて、大嫌いっ…!」


正さん「・・・」









                           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





窓に射し込む朝の光を浴びながら
久美子は、うつむく。



久美子の心に大輔の声が、響いた…










大輔「親父さんは…
お前が出て行ってから…
一日も休んだことが無いんだぞ!」









                          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄









大輔「…右腕だった佐藤さんが辞めてから
一人でこの「まつだ屋」を守ってきたのが仇になったなぁ…」









ゆっくりと…
工房の中を見渡す、久美子。

その視線は餡を煉る大鍋の前で、止まったー







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