英語発音の落とし穴。本人は気づいていない英語発音のよくある間違い
前回に続き、今回も発音の話をしたいと思います。
何故なら、最近、話の中に横文字を入れて話す人が多くなったと感じることが多いからです。
落合陽一さんのようなスマートな二言語ミックスならいいのですが、「英単語の散りばめ方がどうも戴けないな~」と感じることが多いように思うのです。
「その文脈でそのワードを使うのは奇妙、、」という場合もあるのですが、別の意味で違和感を持つこともあります。
そもそも、個人的には、日本人が日本人に何かを伝えたい時には、美しい日本語で伝えるのが一番、、と言うのが(他人様に強要するつもりはありませんが)私の考え方です。
政治家や評論家たちが『ハザード・マップ』、『リスク』、『アラート』等のカタカナ語を乱用することに、苦々しい思いを抱きます。国民誰でもが理解できる言葉で丁寧に説明し、命の安全に万全を期すべきと思うからです。
政治家に限らず、それが誰であっても、カタカナ語を沢山散りばめて意気揚々と話しているその話者を眺めていて、「元の英単語を知らないで使っている」と感じられる時、「まず元の英語の意味と発音を学んでほしい、、」と思ったりします。
今日は、具体的な例を出して、少し説明してみます。おつきあいください。
日本では、ハリウッド映画をはじめ英語教材もアメリカ英語の方がイギリス的な発音や表現より主流になっている感があるため、ここでは、アメリカ英語の発音を採用します。
まず、昨今、どこでも耳にするようになった『マインドフルネス』という言葉の元になった英単語から。
mindfulness /ˈmaɪndflnəs/
『-fulness』がつく語は、最近 よく耳にする『factfulness』以外にも、
peacefulness
gracefulness
fruitfulness
forcefulness
faithfulness
など、色々あります。
これらの単語はどれも、第一音節にアクセントがあります。つまり、後半の『-fulness』の方にアクセントがあるということは、発音・アクセントの法則的に考えにくいのです。
それなのに、日本では何故か、『マインドフルネス』や『ファクトフルネス』のように真ん中あたりにアクセントがあるかのように発音されています。
これらは、日本では浸透してしまっていますが、これらの言葉を聞きかじった人々が、「きっと英語でも同じようなアクセントなんだろう」と思い込んでいると、いつか自分の間違えに気づいた時に衝撃を受けることになるでしょう。
他にも、気になるのが、『サステナブル』や『サステナビリティ』の表記です。これらは英語では二重母音が含まれる語だからです。
sustainable /səˈsteɪnəbl/
sustainability /səˌsteɪnəˈbɪləti/
『sustain』の名詞形である『sustainability』には『tənə』という音は含まれていません。
含まれているのは『teɪnə』という音です。
簡単に言うと『イ』の音が入ります。
しかし、maintain/maintenance では勝手が違います。
下記の通り、動詞形では『ˈteɪ』と二重母音になりますが、名詞形では『tə』の部分は短母音であり、『イ』の音は入りません。
maintain /meɪnˈteɪn/
maintenance /ˈmeɪntənəns/
ここまでご理解頂けましたでしょうか?
お茶でも飲みながら、読み進めて頂けましたら幸いです。
外来語として日本語の中に定着している、『エゴ』という語は、英語(元はラテン語)の『ego』から来ていますが、意味合い的には 『ego』よりも『egoism』という語の意味で使われていることが多いようです。
つまり『ego』の主な意味は『自我』ですが、日本語の『エゴ』は ”利己主義”とか”我儘”・”横暴さ”のような意味で使われているようです。
発音も 英語では『/ˈiːɡəʊ/』と『イー』という音から始まるのですが、日本語では、『e』をローマ字読みで『エ』と読んでいます。
同様に、オーストラリアにいるダチョウを一回り小さくしたような鳥の emu まで 『エミュー』と発音してしまっています。が、正しい発音は『/ˈiːmjuː/』です。
ego /ˈiːɡəʊ/
emu /ˈiːmjuː/
ある時、オーストラリアの動物園で、動物園の職員に「エミューが見たいんだけど、どこ?」と訊いている日本人の女性を見かけたことがあります。
動物園のおじさんに なかなか解ってもらえず、手を羽のように体の脇で動かしたり、手でクチバシを表現したり、と、身振り手振りで苦戦していましたが、そのうち分かってもらえていました。
(ほっ)
質問の意味がやっと解った職員の男性が aha moment を得て、”aaaaaah イーーミュ――!” と仰っていました。
(画像の下に記事が続きます)
辞書で発音記号を調べれば、ちゃんと書いてあるのですけどね。 みなさん、調べるのが面倒くさいのでしょうか、、、
面倒くさいというより、こう発音するのだろうと信じて疑わない、、という場合が多いのかもしれません。
みなさんは どうでしょう。
もちろん、『卵(egg) 』や『反響(echo)』は 『/e/』で発音しますが、『卵』の英語発音は、日本人が馴染んでいる ”エッグ” ではなく、”ッ”を入れずに発音します。
egg /eɡ/
日本語の『エッグ』とは少し違いますよね?
次、行きます。
私たちが『エプロン』と呼んでいるものは 英語では、二重母音の『/ˈeɪ/』で発音します。
apron /ˈeɪprən/
リンゴなら、
apple /ˈæpl/
なので、二重母音の『/ˈeɪ/』ではなく、短母音の『/ˈæ/』ですね。
日本語で ”アプリ”と呼ばれるものは、英語では ”app(s)” と言います。
『application』の短縮形です。
app /ˈæp/
日本語で ”サプリ”と呼ばれるものは、英語では ”supp(s)” と言います。
『supplement』の短縮形です。
スーパーなどでは、サプリは ”the supps aisle” にまとめて置かれていることが多いですね。
”アプリ” や ”サプリ” の様に『リ』まで言う日本語をそのまま英語に転用しようとすると、相手が勘のいい人でない限り、なかなか理解してもらえないと思います。
『i』も読み方は 2通りあります。
indent /ɪnˈdent/ は『i』という短母音ですが、
identifier /aɪˈdentɪfaɪər/ には 『ai』という二重母音が2回 出てきますね。
『identifier』という語を見て「・・ん? ・・イデンティフィア? アイデンティフィア?」と悩んでいる人を時々見かけますが、もしかしたら『identity』や 『identify』の方が読みやすいかもしれませんね。
これらの落とし穴は、『辞書を見て確認する』という基本的な学習作業で回避出来ます。
一旦間違えて覚えてしまうと、それを修正するのは意外に大変です。癖というものは一旦身についてしまうと、unlearn、つまり修正するのに手こずります。
学生さんであれば英語の試験で バツをつけられて間違いに気づくことはあるかもしれませんが、社会人になると、一々間違いを指摘してくれる人もいなくなり、英会話スクールに行っても、”日本人固有の発音”と思って、ネイティブの優しい先生たちも指摘してくれなかったりします。
英会話スクールの先生たちは、「間違ってもいいから、まずは英語を話しましょう!」という思いで教えている人が多いです。なので間違いは最低限しか修正してくれないことが多いのが現状です。
実際、私は生徒さんたちから、「今まで、いろいろな英語学校を試したけど、一度も直されたことがなかった」という話をよく伺います。
『間違ってもいいから話す』ことは、もちろん大事なことです。それに異議はありません。
ですが、間違いを極力減らして話せたら、もっと自信をもって話すことが出来るようになる、ということもあるのではないでしょうか。
発音は、決して、「ネイティブの様でなければならない」ということではありません。
そもそも ”ネイティブ”と言っても どこのネイティブ?という話です(アメリカ?イギリス?ニュージーランド?オーストラリア?インド?フィージー?)。
英語話者の誰にでも、その人独特の、もしくは 特定の国や地域に独特のアクセント(=訛り)があります。それは自分のアイデンティティーとして誇り高く在ればいいと思います。
その一方で、英語話者なら誰にでも伝わるレベルの正しい発音を私たちが身に着けることで、相手に自分の言いたいことをより分かってもらえるという大きなメリットが得られることも確かです。
写真提供:bBearさん https://www.photo-ac.com/profile/841363