ハス
https://www.water.go.jp/honsya/honsya/pamphlet/kouhoushi/2013/pdf/1308-11.pdf#search='%E5%87%9B%E3%81%A8%E7%AB%8B%E3%81%A1%E4%B8%8A%E3%81%8C%E3%82%8B%E8%93%AE%E3%81%AE%E8%8A%B1' 【ハス】 より
インド古代神話においては生命・万物創成の母胎となった宇宙の中心的存在とされ、その影響を受けた仏教においては仏様が座る蓮華座などとして知られるハス。泥中からすっくと立ち上がり凛とした花を咲かせる様が、こうした観念を生んだのでしょう。ハスは恐竜が繁栄していた白亜紀後期にすでに繁殖し、今日に至るまでその姿を太古のままに伝える貴重な植物です。よく混同される花にスイレンがありますが、DNA 塩基配列の比較から、それぞれ系統の異なる植物でいわば他人の空似だということが分かっています。
ハスは本州、四国、九州の湖沼、ため池などに生育する多年生の植物で、花の色は淡紅色または白色です。地下茎が地下を横に走り、その節から水面を突き抜けて伸びる茎に葉や花をつけます。直径 30 ~ 70cm になる葉は多くが水上に抜きん出る立葉となりますが、生育初期には水面に浮く浮葉も出ます。ちなみにスイレンは浮葉が主体で、ハスの葉には撥水性がありスイレンのそれにはありません。
開花期は6~9月。早朝より開花を始めますが、最も美しい花を見るには朝6~8時ごろが最適です。花径は 15 ~ 25cm、午後には花を閉じるものが多く、3 日間ほど開いては閉じる開閉を繰り返し、4 日目になると花弁を落として蜂の巣に似た花かたく托を残すのみとなります。「蜂の巣」がハチス(ハスの古名)、そしてハスの語源となったといわれています。花托の中に出来る黒色でふつう楕円形の種子は寿命が長く、1951 年、大賀一郎博士により推定 2000 年前の泥炭層から発見された種子が発芽、開花し、大賀ハスとして今も栽培されています。
地下茎の先端の数節分が肥大してレンコンとなりますが、レンコンは栄養を貯め、冬季を休眠して乗り切るためのものです。茨城県の西南部17 市町に農業・水道・工業用水を供給している霞ヶ浦用水の揚水機場(かすみがうら市牛渡)周辺にもハス田が広がり、7 ~ 8 月ごろに美しいハスの花が見られます。茨城県はレンコン生産量日本一といわれ、特に土浦市・かすみがうら市の霞ヶ浦湖岸地域はその大産地です。周囲をハス田に囲まれた同揚水機場を管理する水資源機構・霞ヶ浦用水管理所のマスコットキャラクター、「ヨウスイ君」と「カスミちゃん」は、それぞれハスの葉っぱと花を手に持っています
https://net1010.net/2009/07/id_1742/ 【ハスの花】 より
南禅寺のハスが満開です。
ハスの花というのは,多くの花の中で別格の趣があります。
極楽の池に咲き乱れているイメージであったり,仏様が蓮華座に座っているイメージであったりして,犯しがたい高貴な花の印象があります。
花をこっそりと切り取って,部屋に飾るといったことは,できそうにありません。
ハスの花について,「朝日百科 植物の世界」(1997年)には次のように書いてありました。
インドの最高神のひとりであるヴィシュヌは,原初の水の中で,大蛇を寝台として眠っていた。四千ユガ(宇宙世紀)の眠りの後,彼は創造の志を起こした。その意欲はハスの形(世界蓮・ローカ・パドマ)をとって彼の臍から成長し,そのハスが花開くとそこにブラフマー(梵天)が生じ,花の台(うてな)に座して天地万物を造化した。
この壮大な世界蓮の神話において,ハスは生命発生いや世界創成の神秘的ポテンシャルをもつ原初の植物である。仏教芸術で仏が蓮華座に座し,また日本の信心深い仏教徒が死後は浄土におもむいて「蓮の台に生まれる」ことを切に願った背景には,こうした古いインド神話があることを忘れてはならない。
ところで,なぜ,蓮華なのか。
原初の世界蓮にせよ,母胎としての蓮華にせよ,三千大千世界である蓮華にせよ,また心臓としての蓮華にせよ,花あまたあるなかで,なぜハスがこれほどまでに奥行きの深い,力強い象徴となり得たのだろうか。
泥土の中から,汚れなく美しい花を咲かせるから,とはよくいわれる。だから肉に対する魂,現世に対する永遠の象徴となり得るのだ,と。それもあろう。しかしそれだけではない。ハスの花弁が著しく数多く,しかもそれが整然と並び重なって,ある確かな秩序,美しいひとつの総体,要するにひとつの「宇宙」の印象を与えるからである。しかもこの完壁に美しい秩序は,それ自体ひとつの生きものであって,硬い蕾の状態から,徐々に幾葉もの花弁を広げて開花する。収縮した心臓が膨張するように,宇宙がいくつもの劫(カルパ・非常に長い時間)を経て収縮から膨張へ向かうとされるように,未敷蓮華は人類の若かりし日の神話と宗教の形而上学のすべてのみずみずしい朝露を含んで開敷する。その花芯は大字宙の中心であり,宇宙発生の母胎であり,森羅万象を流出せしめるエマナティオ(根源的流出)の源にほかならないのである。
う~ん,何かハスってすごいな,という気がしませんか。
またその高貴な花の根が,庶民的なレンコンだというところに大きな落差を感じると同時に,ただの根っこでないところに,また偉大さを感じてしまいます。