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妄想列島

少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口2-

2020.08.16 12:00

2 穴の中の世界


落ちたと思ったが、彩里水は何処も打っていない。というより、落ち続けている。


しばらく彩里水1人が通れる程度の細く暗い穴を滑るようにただ落ちる。


落ちる。


落ちる。


しばらく落ち続けると、突然先程より少し大きな空間に入った気配を感じた。

しかしまだまだ底は見えないし、辺りが暗いため周りの様子も見えない。

しばらくはただ落ち続けることしかできなかったが、だんだんと暗がりに目が慣れてきた彩里水。

最初はただただ恐怖だったが落ちることにも慣れてきて、とにかくこの暗闇で落ち続けては何もできないと思った彩里水は一体どうなっているのだろうと辺りを見回す。

すると下方にランプが小さく光って浮いており、その周辺だけ照らされているのを見つける。

重力のまますごい勢いで落ち続けていたが、あのランプを掴んでみようと思い立つ。

すごい速さで近づいてくるランプに集中し(実際には彩里水がランプに近づいていっている)、思い切って手を伸ばす。

「えい!」

――つ、つかめた!

ランプを掴むとスイッチとなる紐がついており、そこに紙切れが結わえ付けてある。そこにはこう書かれていた。

「私を引っ張って。」

書いてあるまま彩里水は紐を引くと、小さなランプの明かりはぼんやりと広がっていき、辺り一面を照らす。

するとそこは見たこともないほどたくさんの本で埋め尽くされた壁があった。彩里水が好きな漫画はないかと彩里水はすごい速さで通り過ぎる本棚を探す。

たくさんの漫画や絵本、文庫本に新書もあるし、見たことがない文字で書かれている本もある。彩里水は身体の体勢を変えたりしながら本棚に近づき、気になった本に適当に手を伸ばし落ちながらパラパラと捲る。

「ふむ。」

難しそうな本を取ってしまい、なんだか興味が惹かれなかった彩里水はそのままポイと本放る。すると本はその場に浮いたまま、彩里水だけが下へ下へと落ち続ける。

もう数冊、本を手にしては放るというのを繰り返し、彩里水は気付く。

――そうか、やっぱり。じゃあ、このランプも手を離したらきっとその場に留まっちゃうんだな。

しかし、先程ぼんやりと広がったランプの光は広がり続け、もうかなり下まで薄明るく照らしている。それなら手を離してももう底まで光は届いているかも知れないぞ、と思いながらも、底が見えていないため確信が持てない。

――試しに手を離してまた真っ暗になったら嫌だしなあ。それに、また都合良くランプがあるかどうかもわからないし・・・。

彩里水はランプを手放すのを諦め下へ下へと落ち続けることにした。

落ち続けながらもここには意外と彩里水の興味を惹く物がたくさんあった。

漫画本にゲーム機、サッカーボールにスライム、テレビにはユーチューバーやお笑い芸人が映っていた。どれもすごい速さで通り過ぎてしまったけど。

鉛筆や消しゴム、ビー玉や傘、写真立てに知らない人の写真が飾ってあったりもした。

興味のあるものも無いものも、とにかくたくさんの物を通り過ぎながら、彩里水少年の目に1枚の地図が飛び込んできた。

スマホやパソコンの中の地図ではなく、昔読んでもらった絵本に出てきたような、古そうな紙に書かれている地図。なんだか彩里水にはそれが宝の地図のように思えた。不思議と目を惹くのだ。先程のランプ同様、思い切って手を伸ばせば届きそうな距離にあった。

「よっと!」

先程同様に声を上げて思い切って手を伸ばし、彩里水は地図をゲットした。

「おおー!宝の地図っぽい!」

下へ落ちることに慣れきった彩里水は最早恐怖を感じる事も無く、地図を掴んだままただ下へと落ちていく。


つづく