少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口3-
3 宝の地図?
彩里水は落ちながら掴んだ地図を広げて見てみる。
地図には所々英語で文字が書かれていた。
大きな陸と思われる図が4つ。左上の大陸?の上には「MirrorLand」、右下の大陸?の上には「WonderLand」と書かれていた。
右上の大陸には文字は書かれておらず、細い線で大陸を細かく分けているようだった。左下の大陸?は横に細長い。その大陸と大陸の間にはミミズのようにうねうねと「The sea to connect the world」と書かれている。
彩里水は小学校1年生から通い始めた英会話教室で培った英語力を発揮する時が来たことに少し驚いた。
――あ!これMirrorって、たしか、かがみ。それでこっちのWonderは・・・。何だっけ?
その2つの文字の次には共通して「Land」と書かれている。
――Landはたしかー。えーっと。
彩里水は地図を睨んで考えながら、ミミズのようにうねうねと書かれている部分の「sea」という文字を見つける。
――あ、これは海だ!・・・あ、そうださっきの「Land」は“りく”じゃなかったっけ?てことはー、かがみりく?んー、よくわかんないけどとにかく、地図ってことはまちがいないな!海とりくがあるんだから。
でも、宝の地図っぽくはないよなあ。すてちゃおうかな?
結局彩里水はその地図を捨てずに畳んでズボンのポケットにしまっておくことにした。
彩里水は再び重力のままに落ちる。
落ちる。
落ちる。
落ちていく中にはとても面白いものもたくさんあった。
最初は鉛筆やビー玉など彩里水の身近な物ばかりが本棚の壁に飾られるように置かれていたのだが、次第にどこからともなく陽気な遊園地のような音楽が聞こえ始める。
ドラゴンやグリフォンのような空想上の生き物や、絵本やアニメに出てくるような小さな人間に虫のような羽が生えている妖精など、実際には見たこともない生物が剥製のようにリアルな置物として本棚の壁の隙間にところどころ飾られていた。
小さな女の子の魔女たちがホウキに乗って空を駈けて競走をしているような写真や、七色の雲の浮かぶ写真、見たこともない色とりどりの食べ物が乗った皿や縦半分に色が違う飲み物が入ったコップがテーブルの上ではなく宙に浮いており、鮮やかで美しい庭園の中で大勢の人や妖精、先程見た写真の空想上の生き物たちが楽しそうに食事をしている写真、星の輝く夜空から下りてきているブランコに2人で乗り肩と頭を寄せ合い恋人同士のように寄り添う猫耳の生えた人間が、猫の尻尾を絡ませて夜空を見上げている後ろ姿が映った写真、美しい花に顔があり合唱をしているように見える写真・・・。
夢のように楽しくて不思議な置物や写真がいっぱいだった。
ランプはハート型や星形など様々な形で赤や黄色、緑など色とりどりの照明を壁に映し出していた。
――写真に見えるけど、絵か合成だよなあ。でも、こんな世界あったらすごい楽しそうだな!ドラゴンとか見てみたいよなあ。ドラゴンとかとサッカーしてみたいな!あと、遊園地に行くとか。
ドンドン落ちているにもかかわらず、すっかり落ちる感覚に慣れた彩里水は恐怖を感じるどころか呑気にそんなことを思っていた。
しかし、落ちれば落ちるほどに周りの様子はなんとなく不気味な気配を帯びていく。
いつの間にか陽気な音楽は聞こえなくなり、ランプの明かりも小さく暗くなっていた。次第に、蜘蛛やトカゲなどの標本。ナイフや銃、弓など武器ののような物が目につき始める。
――銃とか本物・・・?
先程は楽しげだった写真しかなかったが、今度は先程の妖精や人や人面花や木などが武器を手に争っている写真ばかりが飾られていた。
――戦争してるみたいに見える・・・。
さらに落ちると理科室にあるようなホルマリン漬けの何かが現れる。
「ひゃ!」
あるものが目に入り、アリスは思わず悲鳴をあげる。
――え?人体模型?だよね。・・・なんだ。それに、じ、人骨じゃないよね?
落ちていく一瞬では人の半身が皮を剥がれているもの、そして人骨に見えた。本物のわけはないよな、と思いつつも不気味な気配に先程まで楽しい気分だった彩里水はすっかり意気消沈していた。
つづく