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回顧録 ② あくまでも普通のひと

2016.06.24 06:27

高校生の頃は、背伸びをして、

完全に普通の人にとけ込み、

占い好き女子を斜めからみていた僕も、それ以前。

中学生の頃は神秘的なものに惹かれていた。


とはいえ、友人たちから後ろ指をさされる覚悟がなかったので、

あくまで僕は普通です。と外見だけは取り繕っていた。


けれど、その裏では、

たとえば『孔雀王』などの、

呪文を唱えて魔物と戦うような、

それでいて、ちょっとエッチなのとか、

神話の神々が出てきて戦うストーリーなマンガを好み、

読みふけっていた。


だれにも内緒で買ったタロットカードも、その延長線上にあった。

これ買ったら、いろんなこと分ちゃって、魔法使いみたいになれるかも。

そんな淡い妄想を抱き、生唾をのみ、震える手で、田舎街の本屋にて購入したものだった。




けれど、この類の出版物は、当時、市民権を得ておらず、

クラスの中でも、ごくマイノリティというか、

いわゆるオタクというか、そういう人たちが好きな嗜好品で、

「ちょっと変な人」を象徴するものだった。


あくまで「普通の人」枠から、ハミ出したくなかった僕は、

ほんとうは、そっち側の嗜好くせに、

周りの目を気にして、普通の人のフリをする小心者だった。


たとえば、友人が遊びにきても、

バレると確実にバカにされ、

次の日から「キモたろっと」みたいなあだ名がつくことを恐れた僕は、

学習机のカギがかかる引き出しに隠し、素知らぬフリをしていた。

さらに、タロットカードばかりか、

黒魔術、白魔術の本も入っていたことは、もちろんトップシークレットだった。


その年頃ならだれでも、基本的に好奇心旺盛で、

他人の家の引き出しや扉をむやみに開けたがる傾向があるが、

友人たちも例に漏れず、

いつもカギが掛かっている引き出しに興味を持ち、

なんとか開けてやろうと必死だった。


だが、意地でも開けようとしない僕の不自然な態度から、

友人たちには、ずっとアダルト雑誌かなにかを隠していると思われていた。


このように、いわれのない誤解を受けても、

占いとかやってる変なやつ、とだけは思われたくなかったのだ。


田舎の力のない男子中学生が、

自分の嗜好を隠しつつ、

思春期の悩みから救いを求めた先がタロットカード。


女子か。というツッコミもありそうだが、

本当のことなので、あえて書いておこうと思う。