工房の風景
2020.07.10 01:19
栗原正明建築設計室
栗原正明
新型コロナウィルスが問題になって家に居る事が多くなり、家の中の物が色々と気になり出した。居間で使っている椅子もその一つで、座面のペーパーコードが大分傷んでいたので張り替えて貰う事にした。その作業をする工房が近くの町田市に有る事が解ったので、そこへ自分で持ち込んで送料を節約しようと考えた。普段見る事が出来ない作業場所を見てみたいと言う気持ちも有った。
実際に行ってみると、思ったより遠くて時間が掛かったけれど、作業をしてくれるSさんは気さくな人で、色々と話しを聞けて楽しかった。またその工房が独特な場所で、放棄された鉄筋コンクリートの構造物を借り、自分で屋根や床、設備を付け加えたのだと言う。元々の構造物が持つ迫力と、加えられた設えの実用的な清々しさが重なって、暫く見入ってしまう程の魅力が有った。
その工房は作品では勿論ないし、土着的と言うのでもない。しかし確かな存在感と、そこに有る理由、意義を持っているように思われた。帰ってから自分の生活や仕事を振り返って、あまりにも小綺麗で薄っぺらい世界に慣れ切ってしまっているのではないか、と思ってしまった。