ラグランジュの未定係数法
さて、今回は物理でエネルギーの最小値を求める時によく使うラグランジュの未定係数法について説明したいと思います。物理では、余計なことをしなければエネルギーは最低の状態になるので、とても大事な手法ということになります。
ラグランジュの未定係数法というのは、条件付きの極値(山頂や谷底のような部分)を調べる時に使います。
関数gが0だという条件で、関数fがdf=0を満たす時を知りたいとします。df=0の意味は、fが上り坂だったり下り坂だったりしないで、平らなところ(山頂、谷底など)であるという意味です。この条件ではg=0で一定なので、dg=0 (gは増えたり減ったりしないで一定)でもあります。ここで、fとgが位置ベクトルrの関数であるとすれば、ベクトルrで微分した後でベクトルrの微小量を掛けてもこれはdfと同じです。つまり、df=df/dr・dr=∇f・dr (rはベクトルrのこと)となるような、ベクトルrで微分することを表す演算子∇(ナブラ)を考えます。すると、∇fと∇gは、g=0に沿ったベクトルdrと直交します。よって、∇fと∇gは平行なので、未定係数λを用いて∇f=λ∇gと表せます。
例として、半径1の円に内接する長方形の面積の最大値を求めてみましょう。g=0が半径1の円に内接するという条件を、fが長方形の面積を表しています。∇は、ベクトルrの成分の微分からなるベクトルで、今はxでの微分とyでの微分からなるベクトルです。ここで、dではなく∂(デル)を使っているのは、xで微分する時はyを定数として、yで微分する時はxを定数として偏微分という微分をするためです。これを計算すると、長方形の面積の最大値は、正方形であるときの面積である2だと分かります。
物理では、λは次元を合わせるための物理量となります。例えば、fがエネルギー、gが粒子数の条件であるとき、λは1粒子当たりのエネルギーであり、化学ポテンシャルと呼ばれます。ぱっと見、難しく感じるかもしれませんが、分かると物理に対する理解が深まるので面白いです。