イーサン・メイツ / エンジニア (RHCP / Linkin Park) #3
Linkin Park, Red Hot Chili Peppersの作品でエンジニアを務め、Motley Crue の "New Tattoo" アルバムにも携わったイーサン・メイツさんのインタビュー訳・最終回!
今回はレッチリ(以下RHCP)の「予算いくら!?なとんでもレコーディング」や「ウワサ通り!?スーパーボウルのハーフタイムショー」です。
I: インタビュアー
E: イーサン
By The Way のレコーディング
35:45
I: RHCP のメンバーは、スタジオではどういう雰囲気ですか?一緒に仕事しやすい連中ですか?
E: 間違いなくね。めちゃくちゃイイ連中さ。
個人のエゴとか争い事とは無縁だよ。スタジオでは、彼らはとにかく最高の音楽を作ることに意識を集中させている。
音楽への真の愛情と繋がりを持つバンドだね。
33:10
I: RHCP との思い出は何かありますか?
E: “By The Way” のレコーディングは面白かったよ。
ジム・スコットというエンジニアが全てのトラックを管理していたんだけど、あの頃ジョン・フルシアンテ(Gt) がモジュラーシンセサイザーに夢中で、ものすごい数のオーバーダビングを始めたんだ。
なので、基本ジムはフルシアンテと一緒にハリウッドの東端にあるEast West Studioで一緒にいて、そこでフリー(Ba)はベースのレコーディング、アンソニー(Vo) はアンソニーで歌入れを始めたくて…というように、色んな作業が同時進行で行われていたんだ。
こうなると、ジムが一人で面倒を見れるキャパを超えているから、僕らはシャトー・マーモントのスイートルームに仮設スタジオを作って、アンソニーの歌入れをそこで開始したんだ。
僕と(超有名プロデューサー)リック・ルービンは数か月間、そこでアンソニーの歌入れを一日中やっていたよ。
*シャトー・マーモント
ハリウッドにある超高級ホテル。錚々たるセレブがこれまでに宿泊し、様々な逸話を残してきた。
ちなみに、亡くなったセレブの幽霊が出ることでも有名…
E: 歌入れの半分くらいが終わった段階だったかな、ジムが作業の場をサンタモニカのスタジオ The Village に移してミックスを始めたんだけど、ここで僕らは「このやり方はあまりにもバカバカし過ぎる!」となった。
というのも、この頃はまだファイルをメールでやり取りするのではなくハードドライブで管理していたから、一か所で作業が終わったデータを若い連中が別のスタジオに持って行って、そこで編集したものをまた別の所へ…みたいなことをやってたんだ。
ということで、最終的には全員がThe Village に移って、そこで作業することになったよ。あそこは6階建てぐらいのビルで、大小様々な大きさのスタジオがあちこちにあるんだ。
なので、各メンバーやスタッフが違うフロアで作業をしていても、あそこなら上下階の移動だけで済むからね。
*ちなみにフルシアンテらがいたEast West Studioからアンソニーの歌入れ拠点・シャトー・マーモントが約5km、そこからミキシングを始めたサンタモニカのThe Villageは約11km …
しかも、このサンタモニカ~ハリウッド間は渋滞ポイントなので非効率過ぎる!
それに何より、シャトー・マーモントのスイートを数か月間借りるって…(笑)
まぁ、今は録音環境の進化でその必要性がそもそも無いわけですが、豪快なロックンロール・エピソードですね!
Super Bowl Halftime Show
36:20
I: あなたはRHCP が出演したSuper Bowlのハーフタイムショーに携わりましたか?
E: いや、僕はやってないね。あれは確かブレンダン・オブライエンがプロデュースしたはずだよ。
(*一部ロックファンにとってはこれもすごい話!!・笑)
Super Bowl のハーフタイムでは、ミュージシャンがライブで演奏すること許されない。
I: 本当ですか?
E: この約20年間、生演奏をしたアーティストはいない。
I: じゃあ、僕が家で見てるハーフタイム・ショーは全てレコーディングされたもので、シンガーは口パクをやっていると?
E: ああ、そういうことだ。バンドの楽器も当て振りだ。時々、ボーカルだけ生で歌ってる場合もあるけどね。
I: 例えば最近だと、ジェニファー・ロペスとシャキーラが歌いましたが、あれも事前にレコーディングされていたわけですか?
E: ほとんどの部分はそうだ。時々 “Come on!” とかオーディエンスを煽るよね?ああいうのは生で言ってるよ。
でも、楽器に関しては事前にレコーディングしてある。あの現場ではあまりにも多くの物事が同時進行で動いていて、(生でやると)トラブルが起こる可能性が高いんだ。
世界中で数億人の人々が視聴している中でステージが回転したり、様々な演出がある。リスクが高すぎるんだよ。
これはそのミュージシャンやバンドの演奏力とは全然関係ない、単に技術的観点からの判断だ。
終/