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源法律研修所

方言

2020.08.21 05:04

 昨日は、泉南市・阪南市合同の地方公務員法研修に出講した。小難しい法律のお勉強は退屈なはずなのに、最後まで集中力を切らさずに受講しておられたので、感服した。

 マスクをして一日中立ちっぱなしで(休憩時間には、猛暑の中、敷地外にタバコを吸いに行った。)講義をしたため、汗だくになり、研修中にペットボトルのお茶2本と缶コーヒー1本を飲み干した。

 早起きして電車を乗り継いで遠距離通勤し、一日講義をして疲れ切ったので、帰り道に、ビタミンBを補給するため生ビールで餃子2人前を平らげた。ビールにニンニクが効いた餃子が旨いなんて、我ながらすっかりおっさんになったものだと痛感する。苦笑


 自治体職員研修は、受講者である職員さんにとっては公務なので、改まった場にふさわしい標準語でお話ししているが、堅苦しくなるため、噛み砕いて説明する必要がある場合には、時々コテコテの大阪弁を交えるようにしている。同じことを言っているのに、大阪府内の自治体職員さんにとっては、標準語よりも大阪弁で説明する方が、理解しやすいようだからだ。方言のなせる技だ。


 この方言を使った条例がある。高知市市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例は、前文にのみ方言を用いている。

 高知に行ったことはないが、前文を読むと、坂本龍馬や映画『鬼龍院花子の生涯』の花子を連想させる。


cf.1高知市市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例(平成15年4月1日条例第13号)

前文

何でまちづくりをするが。

みんなあにとって,「のうがえいまち」にしたいき。

なんかあったときに,すっと助け合える関係でおりたいき。

このまちに住んじょって良かったと思えるようになりたいき。

市民も行政もまちづくりを進めたいと思いゆう。

悩みを共有したいし,喜びも分かち合いたい。

話をしたらみんなあ目指すところは一緒ながよ。

市民同士,市民と行政がうまいことつながったらえいねえ。

みんなあでまちづくりができるようになったらえいと思わん。

ほんで,この条例をきおうてつくったがよ。

どう,まちづくり一緒にやろうや。

(訳文)

なぜまちづくりをするのでしょうか。

みんなにとって,「居心地のいいまち」にしたいから。

何かあったときに,すぐに助け合える関係でありたいから。

このまちに住んでいて良かったと思えるようになりたいから。

市民も行政もまちづくりを進めたいと思っています。

悩みを共有したいし,喜びも分かち合いたい。

話をしたらみんな目指すところは同じなのです。

市民同士,市民と行政がうまくつながったらいいね。

みんなでまちづくりができるようになったらいいと思いませんか。

それで,この条例を想いをこめてつくりました。

さあ,まちづくりを一緒にやりましょう。


 沖縄県も、方言を用いた「しまくとぅばの日に関する条例」を制定している。しかし、上記高知市の条例のように訳文がないため、「しまくとぅば」の意味が分からない。県外から引っ越してきた県民もいる以上、不親切だと思う。

 これは、ひょっとしたら戦中に県民挙げて行われた「標準語励行大運動」(沖縄語(ウチナーグチ)を禁止し、標準語を励行する方言撲滅運動)の反動かも知れないが、そうであろうがなかろうが、県外の者には意味が分からない排外主義的な条文は、法制執務の観点からは納得のいくものではない。

 ちなみに、「しま」=「島」、「くとぅば」=言葉。「しまくとぅば」=「島言葉」だそうだ。たぶん「くとぅば」の語呂合わせで、9月18日が「しまくとぅばの日」とされているんだな!笑


cf.2沖縄県の「しまくとぅばの日に関する条例(平成18年3月31日条例第35号)」

(趣旨)

第1条 県内各地域において世代を越えて受け継がれてきたしまくとぅばは、本県文化の基層であり、しまくとぅばを次世代へ継承していくことが重要であることにかんがみ、県民のしまくとぅばに対する関心と理解を深め、もってしまくとぅばの普及の促進を図るため、しまくとぅばの日を設ける。

(しまくとぅばの日)

第2条 しまくとぅばの日は、9月18日とする。

(事業)

第3条 県は、しまくとぅばの日の啓発に努めるとともに、その日を中心としてしまくとぅばの普及促進のための事業を行うものとする。

2 県は、市町村及び関係団体に対し、しまくとぅばの普及促進のための事業が行われるよう協力を求めるものとする。


 岩手県の久慈市も、久慈市議会基本条例の前文に方言を用いている。通称「久慈市議会じぇじぇじぇ基本条例」と言うそうだ。笑

 条例が自ら通称を明記するというのも珍しいのではないか。私は、初めて見た。高知市とは異なり、訳文は付いていないが、意味は分かる。


cf.3久慈市議会基本条例(平成26年3月4日条例第8号)

 おら達(だぢ)の住む久慈市は、碧い海と緑豊かな大地に囲(かご)まれだ自然いっぺぇの郷土であり、このごどをおら達(だぢ)は誇りに思っている。

 久慈市民(以下「市民」という。)がら直接選ばれだ議員どうで構成する久慈市議会(以下「議会」という。)は、おんなじように市民がら直接選ばれだ久慈市長(以下「市長」という。)どともに、久慈市を代表する機関である。

 この二つの代表機関は、おだげぇに市民の思いに応(こだ)えるために、議会は議員どうによる合議制の機関どして、市長は独任制の機関どして、与(あだ)えられだ権限のもどにおだげぇの特性のいいどごを生がして、市民の思いを市政にちゃんと反映させるために競い合ったり、協力し合ったりしながら、久慈市にとって一番いい意思決定を導ぐための共通の使命が与(あだ)えられでいる。

 おらぁどう議会は、議会に与(あだ)えられだこの使命を達成するために、これまでにねぇ発想により、まさに“じぇじぇじぇ”な議会を目指していぐべぇという思いを込めで、この条例(通称「久慈市議会じぇじぇじぇ基本条例」という。)をこさえ、市民の思いに力いっぺぇ応(こだ)えでいぐごどを決意する。



 「ふるさとの 訛りなつかし停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」という石川啄木の歌ではないが、方言は人々を郷愁に誘う。ふるさと納税に力を入れるのもいいだろうが、高知市・沖縄県・久慈市を見習って、全国の自治体も方言を大切にする施策を行ってもらいたいものだ。


 秋田県出身で東海地方で歌手・DJとしてご活躍の伊藤秀志氏が秋田弁で歌った「亜麻色の髪の乙女」をどうぞ♪

 何を言っているのか、さっぱり分からないが、温かみがあるから不思議だ。

原曲であるヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」