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モーツァルト オペラ<ツァイーデ>より≪Ruhe sanft, mein holdes Leben(憩えよ、私の愛おしい人)≫

2020.08.23 12:00

 モーツァルトの未完のオペラ<ツァイーデ>。

モーツァルトの死後、遺品の中から妻・コンスタンツェによって発見されたこのオペラ

は、コンスタンツェも知らなかった初お目見えの作品だったそう…。

当初オペラの名前さえもついていなかったため、ヒロインの名前(ツァイーデ)を

そのまま用いて発表したそうです。

 結末も不明だったこのオペラは、のちに補完され、現在は楽譜として手に取ることが

できます。

 私もこの作品を手渡されるまで見聞きしたことのなかったオペラでした。

 

 未完の作品だったとはいえ、この作品の後に書かれたというオペラ<後宮からの逃走>

完成度には及ばぬものの、楽曲の美しさはさすがモーツァルト‼️

各所にモーツァルトならではの、うっとりするようなメロディが散りばめられています。


 この作品の舞台はトルコ。お話のあらすじですが、

『ヨーロッパから捕虜として連れられてきたツァイーデは、やはり他国から捕虜として

連れられてきたゴーマッツに恋をする。やはり皇帝の捕虜であり、皇帝の部下でもあった

アラチムは2人を助け逃亡させようとしますが、結局捕らえられてしまう。皇帝は激怒し、

2人に死を宣告する。』

という第2幕第15曲のところで未完のまま終わっているそうです。


 第1幕第3曲目、囚われているゴーマッツのまどろむ姿に惹かれて、ツァイーデが

恋する想いとともに、彼を慈しみ包み込むように歌うアリアが、この「憩えよ、私の愛お

しい人Ruhe sanft, mein holdes Leben」です。

 オーケストラの演奏は、ヴィオラがギターを思わせるピッチカートを奏で、オーボエと

ファゴットのソロが彩を添え、ソプラノの優美な歌唱をメヌエット風に聴かせます。


 実はこのオペラを知らなかった私が、音取りのために初めてピアノでメロディを弾いた

時、最初のフレーズで「聴いたことがある…?」と、そのままメロディを歌い続けること

が出来たほど耳慣れた曲でした。

 一度聴いたら忘れないほど覚えやすい曲と言えるかもしれません。


Ruhe sanft, mein holdes Leben, schlafe, bis dein Glück erwacht;

da, mein Bild will ich dir geben, schau, wie freundlich es dir lacht:

Ihr süssen Träume, wiegt ihn ein, und lasset seinem Wunsch am Ende

die wollustreichen Gegenstände zu reifer Wirklichkeit gedeihn.


(微睡んでいる彼に向かって)

憩えよ、私の愛おしい人、お眠り、あなたの幸運が目を覚ますまで

そこに、私の「写し絵」を差し上げましょう、見てください、

あなたに どんなに明るくほほ笑みかけているでしょう

あなたの甘い夢々、その夢々が彼の望みを叶えるよう、

その豊かな彼の望みを、実りある現実へと進ませてください。


 労役のために疲れている彼が微睡んでいる姿を愛情深く見守りながら歌う、愛する人への

子守唄… 


 自分の写し絵を微睡む彼のそばに置き、目覚めた彼がその写し絵を目にする時には自分

(ツァイーデ)の笑顔を目にしてほしい、というところなどは、彼が彼女を想い出す時は

いつも、彼女の笑顔を思い出してほしいという、今どきの曲にもありそうな健気な彼女の

想いが表現されているのではないでしょうか。

 今も昔も恋をする気持ちが変わらないものなのだなぁ…と、クラシック音楽での表現に

関わっていても、決してそれらの音楽や人間の感情や想いが色褪せないことに感嘆したり

してしまいます。


 Youtubeでも往年の、または現在活躍中の素晴らしい歌手たちの演奏を聴く事ができます。


ルチア・ポップ

https://youtu.be/jSQqbJPoSbw


リタ・シュトライヒ

https://youtu.be/jInL4f-T-QY


エディット・マティス

https://youtu.be/VoZL9ogY7y4


ディアナ・ダムラウ

https://youtu.be/ddbU6szpCvg

オペラ<ツァイーデ>の原作者フランツ・ヨーゼフ・セバスティアーニ

Franz Joseph Sebastianiの1767年に出版された作品。こちらは2012年に

出版されたもの。