少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口10-
10 帰り道を教えて
変な人とは思いながらも、やっと出会えた自分たち以外の他人に彩里水は聞かねばならないことがある。
「あの、すいません・・・。」
ここまで言って彩里水はなんと質問すればいいのか言葉が見つからない。困って白兎の方を見て目で助けを求める。白兎は彩里水の言わんとしていることを察し、彩里水に変わって双子に声をかける。
「あの、オレたち道に迷っちゃって。オールワン遊園地というところに行きたいんですが。それか・・・。あーっと、白いウサギの着ぐるみを着た人に会えたらと思うんですけど・・・。」
自分はオールワン遊園地のキッズゾーンにいたはずが気付いたら彩里水に追いかけられこの世界にいた。彩里水の方は白ウサギを追いかけてこの世界に来たのだから、この聞き方でいいのかはわからないが、そのまま伝えてみるしかない。少しでも情報があればと双子に尋ねてみる。
白兎に尋ねられ、双子は顔を見合わせ首をかしげながら少しだけ意地悪そうな顔をしている。
「んー?オールワン遊園地―?」
「んー?白ウサギー?」
意地悪そうな顔をしたまま2人は顔を見合わせ「んー?」と言い合っている。
「オールワン遊園地ってあそこのことかな?逸?」
「あー、そうかもねえ?禅。」
彩里水と白兎をチラチラ見てニヤニヤしながら2人はもったいぶっている。
「知ってるの?オールワン遊園地。」
彩里水は、やっとこの世界と元の世界との繋がりができたと思い、期待を込めた目で2人に尋ねる。白兎は2人の様子がどうも気に入らず、黙ったまま2人の様子を窺う。
「んー?まあ知ってると言えば知ってるかもね?逸?」
「うーん、まあよく知ってると言えばそうも言えるかもしれないよね?禅。」
「え!?本当に!?オレたち、そこに行きたいんです!どうやって行けばいいか知ってますか?教えてください!」
彩里水は「よく知っている」と言う言葉にさらに期待を込めて尋ねる。
「んー?でも、見知らぬ人にそう簡単に教えるわけには、ねえ?逸?」
「うーん、もし良からぬことを考える人だとまずいよねえ、禅。」
「あ、でも、オレたち別にそんな悪いことしようなんて全然思っていなくて、ただ、そこが帰り道なんだけどそこまでの道がわからないだけで・・・。」
ただひたすら真っ直ぐにお願いする彩里水に対して白兎はちょっと冷静だ。
――てか、オレたちみたいな小学生が別に何もしないだろ、普通。この2人さっきからずーっとなんか怪しいんだよなあ。
「んー?でも、僕たちからの質問にちゃんと答えられたら教えてあげる?逸?」
「うーん。それならいいかもね、禅。」
「ほんと?やったあ!」
彩里水は素直に喜ぶと白兎の顔を見る。
「良かったな、白兎!」
再び双子の方に向き直し元気よく答えた。
「オレたちちゃんと質問に答えます。」
――まあ、質問に答えるなら教えてくれるって言うなら怪しくはないかな。
喜ぶ彩里水に白兎も何もそこまで警戒する必要はないと思い直す。
白兎も彩里水同様、ここから出られないかもしれないという不安はずっと持っていた。けれど、白兎の方はこの世界に来てすぐに彩里水に追われて、そのまま彩里水とここまで来た。もし、1人だったらと想像するとかなり怖くなる。
彩里水は白兎に会うまでは1人でこの生物の気配も感じられない世界にいたらしい。その上、ここまでの道中で彩里水が白兎に会うまでの経緯を話して聞かせてもらったところ、穴をひたすらずっと落ちてきた、と言っていた。
白兎1人だったら、彩里水ほど明るい気分で冒険してみたいなんて言えるだろうか?白兎は彩里水の天真爛漫な明るさに自分にはない強さを感じていた。
自分のためでも勿論あるが、彩里水のためにも早く帰り道を見つけたいと思っていた。
つづく