ハワード・ブレイク (映画音楽/Queen) #2 伝説のFlash Gordon
80年代に公開され、色んな意味で伝説となっている映画 "Flash Gordon"。
その映画にはQueen の楽曲が使われていることでも有名ですが、今回インタビュー訳をお届けしているのは、そのサウンドトラックに携わったハワード・ブレイクさんという作曲家・エンジニアの方。
前回の記事、#1でも信じられないようなエピソードが明かされていましたが、今回もまたなかなかショッキングな内容となっています。
I: インタビュアー
H: ハワード
見たことがない酷さ
(*前記事からの続き)
6:00
H: そこにはQueen のメンバーも揃っていたんだけど、ブライアン・メイは僕に「いくつかアイデアがある」と言い、フレディ・マーキュリーも「キミに聴いて欲しい曲があるんだ」と言うから、まずは彼らのアイデアを聴いて、僕に何が出来るかを考えてみることになった。
そこから僕は帰宅して、実際の作業に入るまでに一週間以上を要した。つまり、実質的な制作期間としては2週間以下ということになる。
(思い出し笑いしながら)サウンド・エディターがそのタイミングで「休暇に行く」とか言うから「バカヤロー!ダメに決まってるだろ!とっとと仕事に戻れ!」と怒ったよ(笑)
僕はそれまでに、あんな巨額予算が組まれた映画であんな大惨事に遭遇したことは無かったから、本当にあの状況が信じられなかったんだ。
あの頃僕は、テムズ川沿いのモートレイクという所に住んでいたんだけど、そこに籠って概ね10日間ですべての曲を書きあげたよ、全身全霊でね。
中には、70人編成のオーケストラ用に作ったものもあった。今ここにその時に書きあげた譜面や書類があるんだ!
I: ほんとですか!?カメラに向けて少しだけ見せて頂けますか?
(*見せてくれてはいるものの、角度があっておらずあまりはっきりとは映りません・汗)
訪れた本番
9:00
H: 僕らは月曜日にナショナル・フィルハーモニックをスタジオに呼んで、僕の指揮の下でレコーディングをすることになっていた。
僕がスコアを仕上げたのは前日、日曜日の夜。それまでの4日間は全く眠れていなかった。もちろん、かなり危険なことだ。とにかく僕はスコアを書きあげるのに必死だったからね。
ところが日曜日の早朝5時、僕は仕上げた譜面を車に積んでから、あまりの天気の良さにテムズ川沿いを散歩しに出かけたんだ、全然寝ていなかったのにだよ。
ものすごく変な感覚だったんだけど、曲を作ることで相当ハイになっていたんだ(笑)
で、月曜日になり僕はスタジオに向かい、監督のディノも早く聞きたがっている中、レコーディングが始まった。
Queenのメンバーも含め、皆が「おぉ、これはすごい!」という感じだった。
そこから3時間のセッションを毎日2回、僕が指揮をしてレコーディングは3日間続き、合計18時間に及ぶレコーディングは水曜日に終了した。
身体がえらいことに…
10:40
水曜日の夕方に帰宅した時には特に問題なかった。ところが、その日一度眠りにつくと、僕は起きることができなくなってしまったんだ。
また不運なことに、実はちょうどその日から妻が子供を連れて家を空けて、彼女は土曜日に帰宅することになっていた。
彼女が土曜日の朝に帰宅した時、僕はまだベッドの中にいた。
奥さん:「あなたここで一体なにをしてるの?」
H:「ここに住んでるんだけど?」
奥さん:「あなた、木曜日にパリに行くって言ってたじゃない」
H:「ああ、そうだよ。明日だろ」
奥さん:「何言ってるの、今日は土曜日よ」
(*動画はイメージです)
僕は水曜に眠りについてから、木曜・金曜と眠り続けて、土曜日の朝に妻に起こされたんだ。
彼女は僕の身体を起こすことが出来ず、最終的には医者に来てもらい、僕の身体を起こすための物質を注射してもらったんだ。
I: なんという…(笑)
H: 医者からも言われたよ、「4日間も睡眠無しで働くなんて危険にもほどがある。もし僕が来れてなかったら、二度と働けなくなっていたかもしれない」ってね。
脳が酸素を失い、機能しなくなるそうだ。
続く…