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KazumaKawauchi

「青いチームのサポーターは、勝敗を左右した」Pakse, Laos

2016.04.04 04:45

プロサッカーリーグの試合というよりは、何か地元のお祭りのような雰囲気だ。大きな横断幕もなければ、客もまばらで、多く見積もっても100人前後だろうか。入場料がかからないところが、地元の祭り感をより強くする。

そういえば、ラオス人はお祭りが好きらしい。

試合が始まってしばらくは、Pakse, LaosにあるChampassack Staiumで行われたこの試合が、私の予想をはるかに超えるエンターテイメントになろうとは、考えもしなかった。

青いチームのサポーターは、ビールを片手になんだかペチャクチャ独り言を喋っているおじさんや、旗を振るわけでも仕舞うわけでもなく、ただ持っている青年、そして少数の美女たちで構成されている。美女というのはちょっと言い過ぎたかもしれない。どうやら青いチームがホームらしい。こいつら、絶対サッカー知らない。と思ってしまった私は、サッカーをわかっていなかった。

試合が始まると、それはそれはつまらないサッカーを繰り広げている。青いチームがファールをして、赤いチームがファールをする。ファールを訳すと反則だということを、きっと彼らは知らない。とてもうまいとは言えないサッカー選手たちが、バラバラのポジションを取りながら試合を進めていく。もしこれが日本だったら私は家に帰って、ブツブツと文句を言いながら夜ご飯を食べていたかもしれない。でも、ここはお祭り好きのラオスだった。

前半0対0で迎えた後半、独り言を喋っていたおじさんがやがて独り言の範疇ではなくなり、持っているだけだった旗を青年が振り回し、少数の美女たちは奇声をあげている。2点を先制された青いチームは、ここから最高のドラマを演出することになる。

青いチームのサポーターは、とにかくうるさい。ファールが起こるたびにブチ切れて、いいプレーが起こるたびに最高の笑顔を見せる。そんなサポーターに背中を押された選手たちは、前半とは比べものにならないほどのバランスの悪さで、とにかくゴールを奪いにかかる。一点を取り返した瞬間、サッカーの神様は180度、態度を変えた。


私は思った。そうそう、これがサッカーだ。サッカーは、人間を狂ったように熱くする。入るかどうかもわからない得点を、90分間も待ち続けるサポーターは、その喜びや不満を体全体で表現する。サッカーとは、こういうものだ。怒号が飛び交い、歓声が湧き、時に溜息をつくスタンドは、サッカーそのものだった。サッカーは、人を狂わせる。

青いチームのサポーターは、周りの目なんか気にしない。「あの人頭おかしい」と思われることより、チームの勝敗の方が10倍大切なのだ。そんな彼らの力で、選手はパワーを取り戻し、そしてサッカーの神様の気分を変えることに成功した。

青いチームのサポーターは、勝敗を左右した。

客もまばらで、決して高いレベルとは言えないサッカー。もしこれが日本だったら、一部の熱狂的なサポーターは白い目で見られ、選手の彼女たちが客席でSNSを更新し、日焼けが目的のおじさんは、上半身裸で寝ているだろう。

私は、ラオスというサッカー未開の地で、本物のサッカーを見た。時にサポーターは、試合を勝たせることが出来る。

青いチームのサポーターは、勝利に酔いしれ、踊り狂った。まるで、お祭りのように。そうだ、ラオス人はお祭りが好きだった。

でも、それくらいしてもいいと思う。試合に勝ったのは選手ではなく、君たちなんだから。


ふとスタンドを見上げると、100人前後だった客席は、その5倍くらいに膨れ上がっていた。

試合の終わったピッチでは、次は俺たちの番だと言わんばかりに、子供達が楽しそうにボールを蹴っている。

初めてのラオスリーグ観戦は、最高に熱くて、そして最高に暑かった。