Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

世界のヒストリカルファゴット奏者①

2020.08.26 11:15

4月にツイッターを始めました。

ツイッターはFacebookと違って軽い話題を投稿し易いのと、知り合いでない多くの人が反応してくれることもあり違った楽しさがあります。

人と繋がっている感覚になるからなのか、いいねをされるととても嬉しく(SNS病?笑)、6月7月はツイッターに沢山投稿しました。

と言っても取り立てて本番やイベントは無いし。何を書こうかなと思っていたところ、せっかくファゴットで古楽をやっているんだから、世界の名手を日本に知らしめよう。という事で「世界のヒストリカルファゴット奏者」を自分の趣味で勝手に選出して紹介していたのでした。

一通り自分の書きたい奏者については説明したので、今度はブログにまとめてみます。

ここで紹介するファゴット奏者たちについては僕が全員を直接知っているわけではなく。あくまでファンとして、演奏を聴いて感じたこと、エピソードなどを書きます。



①ダニー・ボンド(Danny Bond)


バロックファゴットの草分け的な奏者のひとりで、バロックファゴットのソロCDをリリースした最初期の人でもあります。彼の優しい音色と端正な音楽は今でも色褪せません。以前ご一緒した演奏家の先生が「女の子のようにか弱くてきれいな音」とおっしゃっていたのが印象的です。

彼はP.d.Koningという現代の名工と数々の楽器のコピーを作りました。彼の愛用のバロックファゴットはPrudentという1770年にパリで作られた楽器のコピーです。Prudentという楽器はバロックファゴットにしては比較的に新しめの楽器です。この楽器は、20世紀の古楽黎明期の演奏家たちがピッチを415hzに統一しようとなった時、オリジナルでa=415hzの楽器はどれだろう??.....あった!これだ!という流れで注目されたそうです。その後世界中の奏者によってそのコピーが演奏されるようになったという逸話があります。

彼はこの楽器でボワモルティエやコレット、オズィやドゥヴィエンヌなどの名録音を残しています。僕がバロックファゴットを始めたときに音楽家の小林道夫先生がメッセージ付きでCDを送って下さいました。それがダニー・ボンドの録音で、僕にとって思い出深いものです。

ダニー・ボンド バロックファゴット

コレット: ソナタ集「孤独の愉しみ」より第1番

リヒテ・ヴァン・デル・メール チェロ

ロバート・コーネン チェンバロ


②マルク・ヴァロン(Marc Vallon)


彼もまた、この世界の先駆者のひとりで長年に渡りアムステルダムバロック管弦楽団やシャンゼリゼ管弦楽団の首席を務めました。彼の力強い音色がオーケストラに厚い響きを与えます。この人は恐らく、僕が最初にバロックファゴット奏者として認識した人です。というのも、バロックファゴットがフィーチャーされたCDを聴く以前から彼の在籍するアムステルダムバロックの演奏を聴いていたからです。高校時代の僕は、学校までの一時間、ファゴットを背負い爆速で自転車をこぎながらウォークマンの最大音量でクラシックを聴くという、危険極まりないことをしていました。その時間で色んな曲を知ったのですが、トン・コープマンの演奏に傾倒しているときがありました。その時にカンタータや管弦楽曲で演奏していたのがマルク・ヴァロンだったと思われます。とても存在感のある通奏低音でした。ずっと憧れを持っていたファゴット奏者ですが、大学を卒業するあたりで名前を知りました。

彼はソリストとしても多くの演奏を残しています。

彼はフランス人で、もともとはモダンフレンチバソンの名手でした。アンブシュアなんか、師匠であるバソンの神様モーリス・アラールにそっくりなんだとか。その腕前は現代バソンの第一人者であるジルベール・オダンと実力を二分するほどで、彼をライバル視していたオダンはマルクが古楽の方向へ進んだ時に歓喜したそうな。フレンチバソン奏者の友達から聞いた話です。。本当でしょうか笑

マルク・ヴァロン クラシカルファゴット

モーツァルト:ファゴット協奏曲

トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック管弦楽団



③ドナ・アグレル(Donna Agrell)


女流イケメンファゴット奏者(と僕が勝手に呼んでいる)。ラ・プティット・バンド、18世紀オーケストラ、フライブルクバロックオーケストラ。世界の名だたる古楽オーケストラの首席を歴任した名手です。YouTubeで一昔前の古楽オケの動画を見ていると彼女の演奏を沢山見かけます。オランダやスイスの大学でも長年、古楽科の教授として沢山の奏者を育てています。それもあり、彼女を知らないヒストリカルファゴット奏者はいないのではないでしょうか。

演奏は安定感があり、音色、音のライン、歌心。全てが音楽的で、お手本のようです。そう感じるのは彼女の影響を受けているファゴット奏者が世界中にいるからでしょうか。

もちろん沢山の録音を残していますが、僕が注目したいのは初期ロマン派の作品の録音。彼女は19世紀スウェーデンのファゴットのレパートリーを研究しています。フランツ・ベルワルドやエドゥアルド・デュピュイの室内楽曲を収めたCDでは、当時使われていた楽器での演奏を聴くことができ、とても貴重なものとなっています。(Youtubeにはありません)

ドナ・アグレル クラシカルファゴット

モーツァルト:ファゴット協奏曲、第二楽章

ペトラ・ミュレアンス指揮、フライブルク・バロック管弦楽団



④ジョセフ・ボラス(Josep Borràs)


スペイン古楽界の重鎮で、ジョルジュ・サヴァール率いるル・コンセール・デ・ナシオンの首席、ヨーロッパを代表するファゴット奏者です。

スペインで独自の進化を遂げたファゴット「Bajón」の研究者でもあり第一人者です。

彼については演奏以外のことをほとんど知らないのですが、僕の周りのファゴット奏者は彼をとてもリスペクトしています。フランス人でありながら、スペインのカタルーニャにある彼が教える大学に通うファゴット奏者もいるくらい!

ドゥルツィアンを吹くこともあってか、バロックファゴットの音色もノイズィでパワフル。どちらかというと僕の音色の志向も彼に近く、シンパシーを感じます。

音楽作りもドッシリと構えて、作品とがっぷり四つ。といった印象を受けます。

僕は40曲近くあるヴィヴァルディのファゴット協奏曲でRV498 イ短調が特に好きなのですが、低音で大地を一歩一歩踏み占めるような彼の力強い演奏が一番のお気に入りです。

ジョセフ・ボラス バロックファゴット

ヴィヴァルディ:ファゴット協奏曲 イ短調 RV484

アルフレッド・ベルナルディーニ指揮、アンサンブル・ゼフィロのメンバー


次回につづきます。