万葉集: 月(つき)を詠んだ歌 ②
https://art-tags.net/manyo/two/m0214.html 【第二巻:0214 : 去年見てし秋の月夜は渡れども・・・】より
原文
去年見而之 秋月夜者 雖渡 相見之妹者 益年離
作者
柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
よみ
去年(こぞ)見てし、秋(あき)の月夜(つくよ)は、渡れども、相(あひ)見し妹(いも)は、いや年離(としさか)る
意味
去年見た秋(あき)の秋(あき)の月夜は夜の空を渡っていくのですが、去年一緒に見た私の妻は、ますます年月を経て過ぎ去っていきます。
補足
柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)の奥様が亡くなったのを悲しんで詠んだ歌の一つです。
https://art-tags.net/manyo/three/m0289.html 【第三巻 : 天の原振り放け見れば白真弓】より
原文: 天原 振離見者 白真弓 張而懸有 夜路者将吉
作者: 間人大浦(はしひとのおおうら)
よみ: 天(あま)の原、振り放(さ)け見れば、白真弓(しらまゆみ)、張りて懸(か)けたり、夜道はよけむ
意味: 大空を見上げてみると、白真弓(しらまゆみ)のような月(つき)が出ているので、夜道はいいでしょう。
真弓(まゆみ)の木で作った弓を張ったような月が出ていたのでしょうね。
https://art-tags.net/manyo/three/m0317.html 【第三巻:0317: 天地の別れし時ゆ神さびて・・・】 より
原文
天地之 分時従 神左備手 高貴寸 駿河有 布士能高嶺乎 天原 振放見者 度日之 陰毛隠比 照月乃 光毛不見 白雲母 伊去波伐加利 時自久曽 雪者落家留 語告 言継将徃 不盡能高嶺者
作者
山部宿禰赤人(やまべのすくねあかひと)
よみ
天地の別れし時ゆ、神さびて、高く貴き駿河(するが)なる富士の高嶺を、天の原振り放け見れば、渡る日の影も隠らひ、照る月の光も見えず、白雲もい行きはばかり、時じくぞ雪(ゆき)は降りける、語り継ぎ言ひ継ぎ行かむ、富士の高嶺は
意味
天地が分かれてこの地ができて以来、神々しく高く貴い、駿河(するが)の国の富士の山を、空(そら)に向かって仰ぎ見ると、太陽の光も隠れ、月(つき)の光も見えず、雲(くも)も山に行く手をさえぎられ、ひっきりなしに雪(ゆき)が降っています。この富士の山のことをいつまでも語り継いで行こうと思うのです。
- Since the heaven was divided and this land was made, Mt. Fuji has been standing high in Suruga's skies. When looking up this godly and noble mountain, the light of the sun is hidden, the light of the moon is not visible, and the clouds are also blocked by the way to the mountains and It has been snowing incessantly. I will continue to talk about this Mt. Fuji for a long time.
https://art-tags.net/manyo/three/m0442.html 【第三巻:0442: 世間は空しきものとあらむとぞ・・・】 より
原文
世間者 空物跡 将有登曽 此照月者 満闕為家流
作者
不明
よみ
世間(よのなか)は、空(むな)しきものと、あらむとぞ、この照る月(つき)は、満ち欠けしける
意味
この世はむなしいものだというように、この照る月(つき)は満ち欠けするのです。
補足
この歌の題詞には「膳部王(かしはでのおほきみ)を悲しんで詠んだ歌。」とあります。膳部王(かしはでのおほきみ)は、長屋王(ながやおう)の息子さんです。
https://art-tags.net/manyo/four/m0495.html 【第四巻:0495: 朝日影にほへる山に照る月の・・・】 より
原文
朝日影 尓保敝流山尓 照月乃 不猒君乎 山越尓置手
作者
田部忌寸櫟子(たべのいみきいちいこ)
よみ
朝日影(あさひかげ) にほへる山に 照る月(つき)の 飽(あ)かざる君を 山越しに置きて
意味
朝日がさして輝く山に照る月(つき)のように見飽きることのない君を山の向こうに置いてくることです。
・大宰府(だざいふ)に赴任(ふにん)するときに詠んだ歌です。
・この歌の「君」は、舎人吉年(とねりのよしとし/とねりのきね: 0492番の歌を詠んでいます)と考えられています。
補足
この歌を含んで、0492番の題詞には「田部忌寸櫟子(たべのいみきいちいこ)大宰(だざい)に任ずる時の歌四首」とあります。