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YOKO KURAHASHI

赤いバンダナ vol.5 ~はっちゃんのトレードマーク~

2020.08.28 08:00

作/チームCOL


「はっちゃん、お散歩に行こっか」

翌日ママは、はり切って
ボクに話しかけてきた。


部屋の隅ずみを
クンクンしていたボクは、
ドキッとして、ふり返る。


お散歩……。


きのうのことが思い出されて、
心臓がバクバクしてきたボクとは
反対に、ママはごきげんで
ニコニコしながら近づいてくる。


ボクは、ちょっぴりこわくなって、
テーブルの下に隠れた。


やだよー。外、こわいな。
行きたくないよ……。


「はっちゃん、おいで~」


ボクがジッとかたまっていると、
ママがもう一度ボクを呼ぶ。


そーっとイスのあいだから
顔を出すと、ママはボクの首に
ふわっと赤い布を巻き付けた。


うぅ……。
なんか、きゅうくつ。


ママに目でうったえてみたけど、
ぜんぜん気づいてもらえない。


「わぁ~。赤いバンダナが
 よく似合うね、はっちゃん」


むしろ、喜んでる。
ママは、バンダナの結び目を直すと、

「うん、これでヨシ!」

と満足そうに言って、
ボクを抱きあげ玄関へ出た。


「さあ、はっちゃん。
 記念すべき初めてのお散歩よ」


ママは、ボクを地面に降ろして
首に緑色のリードをつけると、
元気よく歩き出した。


ま、待って……。

やっぱりコンクリートは
ゴツゴツしてて、歩きにくい。
牧場のときの土がなつかしいな……。


ソロリソロリと歩いていると、
ボクの体よりも大きなタイヤが
ぐるぐるまわりながら、
目の前にせまってきた。


わぁ! 
やっぱり、こわい。


四本の足をギュッとかたくして、
ボクは、その場にジッと固まった。


ママがリードを引っぱったけど、
ボクは体じゅうの力をぜんぶ使って、
抵抗しつづけた。