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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

バロックの時代12-ルーベンス対ヴェラスケス

2020.08.29 03:39

当時ルーベンスは50代の円熟期で、欧州中に赫赫たる名声を得ていた。その巨匠が、現国王フェリペ4世の絵を描かないわけがない。タイトルは「神に護られるフェリペ4世」。絵は消失しているが、実はヴェラスケスによる模写が残され、いかにもルーベンスらしく天使が登場している。

その絵はすぐ宮廷のサロン・ヌエーボに展示されたが、実はそれまで展示されていたのがヴェラスケス作フェリペ4世騎馬の絵画。この絵は侍従の間に移し替えられた。ヴェラスケスはバロックといえども肖像画に天使など描かない。これは国王でも同じで、写実の中に尊厳を描こうとするのである。

二人は気が合い、共にイタリア旅行を計画したというが、ヴェラスケスの内実はどうだったろうか?結局ルーベンスは何とスペインの外交大使となり、ネーデルランド枢密院書記官の肩書をもらってイングランドに旅立ち、ヴェラスケスは一人でイタリア旅行をする。

その直前にヴェラスケスは「バッカスの勝利」という初めてのギリシャ神話を描く。ルーベンスもバッカスを描くが、この絵はまるで違う。描かれているのは現実の庶民ばかり。この絵は「酔っ払い」の愛称で親しまれるが、ヴェラスケスはギリシャ神話を現実の中で表現することをアピールする。

下右は1635年ヴェラスケス作騎馬のフェリペ4世、右はルーベンスのヴェラスケス模写