少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口21-
21 リンゴと梨
「わ!あ、彩里水・・・。」
白兎は衛兵に聞かれないようになるべく声を抑えながらも驚きの声をあげる。
彩里水の鼻が1cm程度高くなったのだ。
「え?何?どうしたの?」
「おまえの鼻、少し高くなった。」
そう聞いた彩里水の声は弾む。
「マジかよー、オレ鼻が高くなったからちょっとイケメンになっちゃった?」
そう言って喜んでいる彩里水を無視して、白兎もリンゴを一口かじってみる。
シャクッ。
モグモグゴクン。
白兎がリンゴを一口食べ終えると、今度は彩里水が目を見張った。
「ほ、ほんとだ・・・。白兎の鼻が・・・ちょっと高くなった・・・。おまえ、元々イケメンなのにずるいぞ!」
――でも今は、その頭頂部と合わせてめっちゃ変だ。
彩里水は口から零れそうになった言葉を呑み込む。
「ま、まじか・・・。てことはやっぱり、食べ物で体のどっかが伸びるってこと?」
「わ、わかんないけど、そうっぽいよね。」
「じゃ、じゃあ次は梨っぽいの食べてみるか。」
「う、うん・・・。」
彩里水はゴクリと唾を飲み込んで、白兎が梨のような食べ物を口に運ぼうとするのを食い入るように見つめる。
すると、彩里水の視線に気付いた白兎はスッと口を閉じて言った。
「いや待て。なんでオレが先に食べるんだ?おまえが先に食べろよ。」
「え?ええ?い、いや、次は白兎の番だよ。オレ、今リンゴ食べたんだから。」
「でも、オレはその前に水飲んだだろ。彩里水は鼻が高くなっただけだからいーじゃん!オレなんか、こんな変な指と足になっちゃったんだぞ!」
白兎は声を落としながらも彩里水に文句を言う。
――いや、今おまえの体の中で1番変なのは頭頂部なんだぞっ。
彩里水は、本人が気付くまではその事実は黙っていることにした。
「・・・わかったよ。じゃあ、じゃんけんだ。」
「・・・オッケー。後から文句言うなよ。」
「白兎こそ。」
「よし、せーの。」
2人はゴクリと唾を飲み込み、トランプの3たちに聞こえないように小声で叫ぶ。
「じゃんけんぽい!」
「あー!くっそー。オレかあ。」
彩里水は悔しそうにしながら、諦めて梨を口へ運んでみる。
シャクッ。
モグモグゴクン。
彩里水が梨を一口食べ終えると、白兎は再び目を見張った。
「わ!」
「な、何?何々?どうなった?」
「・・・元に戻った。」
「・・・え?」
「鼻、元に戻ったと思う、・・・多分。」
彩里水の鼻は、1cm程度低くなり、元の彩里水の顔に戻っているように見える。
「え?ええー!?なんだよー!オレまだ自分の顔、鏡で見てないのにー。」
彩里水は心底悔しそうに言う。
「いやいや、彩里水。そこじゃないから。そんなことより、伸びるだけじゃなくて縮むってこともわかっただろ?」
「・・・あ!そっか!じゃあ、梨を食べれば白兎の指も元に戻るのかな?」
「・・・うーん、それはどうなんだろ?今、彩里水が梨食べて縮んだのは、鼻だけだったよね。だから、梨は鼻を低くする食べ物ってことかもしれないし、リンゴの効果を消す食べ物かもしれないってこと。それに、他の部分はなんともなってないのかな?一応、服で隠れてる部分も確認してみたら?」
彩里水は確認し終わると言った。
「うーん、多分、どっか引っ込んでる部分があるとは思わないなー。リンゴの時に確認しなかったから、もしかしてリンゴの効果を消すんだったら、他の部分が伸びてた可能性もなきにしもあらず・・・。」
「・・・よし!いろいろ検証してみよう!」
つづく