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妄想列島

少年彩里水の不思議冒険譚 -不思議の国の入り口24-

2020.09.04 12:00

24 ランプと部屋のものたち



彩里水たちが幽閉されている部屋の窓際には、いつの間にかランプが灯っていた。


「あれ?いつの間にかランプが点いてる。」


「ホントだ。・・・あれ?でもそんなとこにランプなんてあったか?」


白兎が言うと誰かが答える。


「いーえ、私の仕事は部屋が暗くなってからですのでね。それまではこちらにはおりませんでしたよ。」


彩里水と白兎は目を瞬かせてランプを見る。


「え?今喋ったの、ランプ?」


彩里水が言うと、ランプは気位が高そうに答える。真鍮で覆われたハロゲンランプは、フィラメント部分が口ひげのように見え、喋る度に明かりが強まったり弱まったりしている。


「はい。私ですよ。」


「うわ!マジか!」


物が話すのを初めて見た白兎は後ずさりして声を上げる。


「マジで次から次へと・・・。ほんとオレ今日1日で頭が爆発しそうだよ。」


そう言うと、白兎はその場にへたり込む。


「な!んな!喋っただろ?物が。」


「うん、喋ってるな・・・。」


「なんですか、あなたたち。物が喋ってるという言い方は失礼ですよ。私は半人半物の人型ランプのラープンと申します。はじめまして。今日からあなたたちの夜の間のお世話をします。」


「あ、はじめまして・・・。」


彩里水と白兎は声を揃えておずおずと挨拶をする。


「お名前はっ?」


気位の高そうな喋り方のままラープンは二人に尋ねる。


「あ、オレは青園彩里水って言います!」


姿勢をシャキッと正して彩里水はラープンに答える。


「あ、オレは時計白兎です。」


白兎も姿勢を正して答える。


「ふむ。時計白兎・・・。なんだか聞いたことがありそうな名前です。」


ラープンは2人を上から下までジロリと見ながら言った。


「さてさて、では君たちにここの皆さんの紹介をしておきましょうかね。何しろ久しぶりのこの部屋の住人になるわけですから。」


「え?皆さん?」


彩里水の問いは無視し、咳払いを1つしてラープンは話し始める。


「んまず!あなたたちが寝るベッドをいつも快適に保ってくれる人型ベッドのベドとドッベ。」


ラープンがそう言うと、部屋の対称の壁際に置かれているベッドたちが脚を彩里水たちに振ってヘッドボードについた顔が笑顔を見せている。


「そして、あなたたちの荷物はキチンとここへ入れればいつもピカピカにしてくれますよ。人型クローゼットのロゼットさん。」


先程ハンガーが掛けてあったクローゼットが扉をパタパタと開閉させて言う。


「あなたたちねえ、ハンガーたちが持って行かれてしまったわよ。あなたたちの服が掛けられないじゃない?」


そう言われて彩里水は、


「あ、すいません。」


とテへへと頭をかく仕草をする。


「それから食器や小物をしまっておく人型チェストのチェイスくん。」


カップがしまってあった棚がニッコリ笑いながら扉をパタパタさせている。


「そして、君たちがしまうのも洗うのも忘れているカップのキップとクップ。」


ラープンが少し呆れた様子でそう言うと、先程彩里水と白兎が使ってそのまま床に置かれたまま水が入っているカップたちが「ウフフ。エヘヘ。」と愛らしい声で笑いながら上目使いで彩里水たちを見ながら恥ずかしそうに取っ手を揺らしている。


「それから最後に、シンクのサンクさんです。」


先程白兎が水をうまく出せなかった流し台が挨拶をする。


「こんばんは。先程、白兎さんは私をうまく使えなかったようですねえ。コツは、信じる事ですよ。君たちなら簡単です。」


と言ってウインクをした。



――・・・信じる事?・・・ていうか、みんなこの部屋にずっといたってことだよな。全然気付かなかった。物だと気配とか感じないもんなのか?



「ねえ、信じる事ってどういう意味?」


白兎が聞き返したが、ラープンの「さあ、これで部屋の全員との挨拶は終わりましたね!」という言葉に質問はかき消された。


白兎はサンクの言葉でしばし思考を巡らせていた。


つづく