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KANGE's log

映画「青くて痛くて脆い」

2020.09.03 14:59

【想像の3倍ぐらい、青くて痛くて脆い。でも、それが青春】

イオンシネマ1日見放題の2本目。

タイトルと、吉沢亮と杉咲花が主演ということで、ラブコメなのかと思っていましたが、記事などを見ていると、どうやらサスペンスっぽいというところまで情報を得て、鑑賞。

他人と距離をとることで、傷つけ傷つけられることを避けてきた大学1年生の楓と、空気を読まない発言で周囲から完全に浮いている秋好は、世界をよくすることが目標の秘密結社サークル「モアイ」を2人だけで作る。しかし3年後、モアイは意識高い系の就活サークルに成り下がっていた。楓はそんなモアイを潰そうと行動を始める…というお話。

最初は、秋好のびっくりするぐらいの理想論と距離感ゼロの詰め方に、「確かに、これは青くて痛い。楓でなくても引くわー」と思いながら見ていました。

この映画のキャッチコピーは「この青春には嘘がある」。

何が「嘘」だったのか。

基本的には、楓の目線で物語が進んでいきます。最初の嘘は、早い段階で明らかになります。楓は、友人の董介をモアイ潰しに引き込むため、ある嘘をついていました。いや、嘘というより、「自分はそう思うことにした」というレベルの話。そこで、我々もスクリーン上で、楓に騙されていたことが分かります。

そして、「世界を変える」という秋好の理想は嘘だったのだと、楓は語ります。この時点で、私たちは楓に対して「それって、お前がそう思っているだけだよな」と思い始めます。

秋好の理想論の「青くて痛くて」度よりも、楓のひとり相撲の「青くて痛くて」度が上回ってくるのです。

そして、決定的な事件が起こってからのクライマックス。 楓は、まだ我々に嘘をついていることがあったのでした。いや、隠していたことがあったという表現が正しいのかな。これが、最も「青くて痛くて」度が高い。そんなことを思っていたことよりも、思っていたことを隠していたということが、青くて痛くて恥ずかしい! ある1つのことを伏せていたという点で、「何者」にも通じるものがあるように思いました。

秋好は、確かに空気は読めませんし、理想論に突っ走っていますが、実はそのことにも自覚的だったのだと思うのです。だから、楓のことも尊重し、ちゃんと自分が突っ走っていないか、楓が思っていることを聞き出そうとしていました。それに対して、楓は、これまでの自分のやり方を貫いて、自分の意見を言わないことで、結局自分の居場所を失っています。彼女は、楓よりも確実に大人に向かって進んでいます。起きたことに対しても、自分なりにケリをつけようともします。

だから、楓は置いていかれるのも当然ですね。それでも、ラストには変われそうなのだから、それでいいじゃないですか。フリースクールに通っていた瑞希ちゃんは、教師に「このままじゃダメだ」と責められ続けている間は逃げていましたが、結局、自分で変わっていきました。楓たちと交流したことも、ちゃんと影響しているのです。

人は変わる。でも、いつ、どこで、どうやって変わるかは人によって違う。青春とは「青くて痛くて脆い」ものだけど、全部が潰れてしまうほどではない。そうやって人は成長していく。

それだけのことだと思います。