「スペイン・バスクの育成を観て学んだこと、日本サッカーとの比較(後編)」Bilbao, Spain
前回に引き続き、今回は後編としてバスクの育成について書いていこうと思います。
7.指導者養成
日本との大きな違いの一つに、指導者養成があります。自給自足で選手を育てているバスクにとって、指導者養成は育成の大きなウエイトを占めます。良い指導者を育てなければ選手の育成は不可能です。
日本とは違い、若い指導者を育てるシステムがあり、むしろ選手の時から指導者講習会に参加することもあるそうです。アスレティック・ビルバオは、バスクのレベルを上げるためにローカルクラブの指導者養成に力を入れており、毎週金曜日に講習会が行われるそうです。計画的な指導者養成が、バスク地方の「育成の成果」を裏付けています。
8.小さな子供でも団子サッカーにならない
日本では、小さな子供に戦術を教えることはあまりしないように思います。難しいからと避けているかもしれませんが、小さな子供の時から戦術でサッカーをすることの楽しさ、大切さを教えているからこそ、全員がボールに集まるようなお団子サッカーにはなっていませんでした。グランドを大きく使ってサッカーをするのは、スペインでは大人も子供も関係ないのかもしれません。
9.ファールスローは取らない
バスクに限らず、バルセロナでも他の国でも、ファールスローの反則を取っているのを見たことがありません。日本では育成において細く反則を取ってしまいますが、こちらはひどいファールスローでもほぼ笛が吹かれません。というか、誰も全く気にしていません。
日本の育成では、スローインになると、ほとんどのチームがボールを奪うチャンスと捉えボールサイドによりますが、ヨーロッパではスローインでボールを奪おうという認識は恐らくないと思います。なので、パッと投げてすぐに試合を続行しようとします。もちろんルールはルールなので仕方ないのですが、日本の育成ほど細かくとる必要は僕はないかなと思います。試合が止まってしまうので。
以前僕が高校生の指導者をしていた時に、大事な場面ですぐにプレーを始めようとしてスローインを投げた際、足が少し出ていたという理由でファールスローを取られ、チャンスを逃した場面がありましたが、「えーー!?それとる!?」と思ったのを思い出しました。
これも日本と欧米の大きな違いの一つかもしれません。
10.シュートとクロスの質
僕がこれまで見てきた欧米の育成のトレーニングや試合は、決まってクロスとシュートの質は高いです。他の部分が日本とそんなに変わらない場合でも、クロスとシュートの質だけは非常に高いように思います。これはレディースの試合でも同じことが言えました。シュートやクロスの意識はイングランドが一番高かったですが、単純に日本よりも「シュート」や「クロス」に対しての価値が高いのかもしれません。育成の段階からこれだけ差が出ていると、プロの世界で差が出るのは当然のことだと思いました。
11.とにかく熱い
どの試合も、とにかく熱くなります。勝つためならなんでもするといったような雰囲気は、試合を熱くし、最高のゲームを作り上げると改めて感じました。
僕がバスクで見た試合の中に、街クラブの頂上決戦のようなリーグ戦の一戦があったのですが(上の写真)これがとにかく最高のゲームでした。お互い気持ちのこもったゲームをすることはもちろんですが、意地と意地のぶつかり合いでした。それに加えバスク人の熱い応援がますますそれに拍車をかけます。
12.同点になった瞬間脚を痛める
上記した試合ですが、最終的に2−2のドロー。ラスト3分で同点に追いつくころには、隣のグランドで試合を見ていたギャラリーもこちらに移動してくるなど、かなりの盛り上がり。同点に追いついた瞬間、追いついたチームの3人が一気に脚を抑え倒れこみます笑 それに対して文句を言いまくる相手チームとのカード合戦は見ものでした笑 イエローカードならくれてやるとばかりに時間を稼ぐ。もちろんそれが良い行動かどうかはわかりませんが、勝つために必要なことな知恵なのかもしれません。
育成の段階でこのような行動をすることで、欧米人の何をしてでも勝ちに行くという思考が完成するのではないでしょうか…
前編・後編にかけてバスク地方の育成を見て感じたこと、学んだこと、及び日本との比較を書いていきましたが、ご覧のように日本との違いが多くありました。
ほとんどのことが、日本がバスクから学ばなければならないことで、非常に勉強になりました。